リスク

大気汚染物質の「優先取組物質」にトルエンが挙げられた根拠を探索(追記あり)

中央環境審議会大気環境部会健康リスク総合専門委員会において、優先取組物質の見直しが進んでいる。「優先取組物質」は1996年の大気汚染防止法改正を受けた1998年の答申で22物質が指定されている。そのなかから選ばれた12物質が「有害大気汚染物質の自主管…

「今後10年ウォッチしておくべき10の新規技術トレンド」

Maynard氏の2020 Scienceブログの12月25日のエントリは「今後10年ウォッチしておくべき10の新規技術トレンド」。新規リスクのない新規技術はないので、この先盛り上がりそうな新規技術をウォッチすることはすなわちこの先盛り上がりそうな新規リスク(社会的…

欧州委員会がリスク評価アプローチの改善を検討開始

欧州委員会の3つの委員会(SCCS, SCHER and SCENIHR)が共同で、リスク評価アプローチの改善に向けたワーキンググループを立ち上げた(pdf)。リスク管理側のニーズをうまく汲み取ることと、リスク問題についての効果的なリスクコミュニケーションを実施するた…

Society for Risk Analysis(SRA)の年会がボルチモアで開催

今週は米国ボルチモアで、Society for Risk Analysis(SRA)の年会が開催された。今年はパスしたのだけど、もし参加してたらこのセッションに出てただろうなというものを、プログラムを見ながら妄想。 月曜日 10:30からのセッションでは、"M2-I Symposium: N…

1歳児にインフルエンザワクチン接種が必要かどうか。

厚生労働省の新型インフルエンザの優先接種対象者には、医療従事者、妊婦、基礎疾患を有する者に続いて、「小児(1歳〜就学前)」が挙がっている。ちなみに1歳に満たない場合は本人ではなくその両親が対象となる。つまり、「1歳児」と「1歳未満」の間に線が…

米国議会でジオエンジニアリングの社会的影響に関する公聴会開催

英国Royal Societyが2009年8月に報告書"Geoengineering the climate: Science, governance and uncertainty"を発表し、ジオエンジニアリングはトンデモ話でなくリアリティある1つの地球温暖化対策であり、その効果と潜在的なリスクを事前にきちんと評価しな…

「21世紀における毒性試験:ビジョンと戦略」その後(4)

NRCからの報告書を受けて、専門誌での議論も始まった。Risk Analysis誌では、2009年4月号において特集されている。他方、Toxicological Sciences誌では、Forum Seriesとして、2009年2月号から毎号様々な論点からのコメントがシリーズとして現在も進行中であ…

「21世紀における毒性試験:ビジョンと戦略」その後(3)

2009年5月11〜13日、ワシントンDCのNational Academy of Sciencesで「毒性経路ベースのリスク評価に関するシンポジウム: パラダイム変化に備える」が開催された。3日間のプレゼン資料のほとんどがウェブサイトから見ることができる。このテーマでプレゼンで…

「21世紀における毒性試験:ビジョンと戦略」その後(2)

米国環境保護庁(EPA)は、NRCの報告書を受けて、庁内ワークグループ、"Future of Toxicity Testing Workgroup (FTTW)"を立ち上げ検討を行い、「化学物質の毒性評価のための戦略計画」を2009年3月発表(リンク)した。戦略計画は3つの要素と8つの戦略目標から…

「21世紀における毒性試験:ビジョンと戦略」その後(1)

2008年2月14日、米国環境保護庁(EPA)、米国国立衛生研究所化学物質ゲノミクスセンター(NCGC)、米国環境健康科学研究所(NIEHS)が5年間の覚書(MOU)に署名、コラボレーションを発表した。EPAは2005年に、National Center for Computational Toxicology(…

「21世紀における毒性試験:ビジョンと戦略」報告書

現在の毒性試験の体系は生物学やバイオテクノロジーなどの科学の進展を適宜取り入れて発展してきたんだけど、リスク評価&管理の全体に照らして適切かどうかという評価はやってこなかった。そろそろ一度全体を見直さなくちゃ、ということで、米国環境保護庁…

機内での子供の安全性とリスクトレードオフ

Freakonomicsで紹介された話。孫引き。機内での幼児の安全性のためには、親の膝の上よりも、席にシートベルトで固定した方がよい。それはそうだ。でもそうすると幼児にも1人分の料金が発生することになる。そうすると、飛行機を使わずに、クルマを利用して移…

Cass Sunstein氏の承認まであと少し!

就任直後のオバマ大統領が、規制審査プロセスに関連する過去の大統領令を廃止する大統領令13497号に署名し、同時に覚書を発表し、行政予算管理庁(OMB)長官に対して新しい大統領令のための勧告(recommendations)を作成することを命じたことを書いた(リン…

欧州のリスク評価人材育成コース

EUの健康リスクアセスメントの人材育成コース。こういうのを見るたびに、欧州統合のメリットって大きいなあといつも思う。10個のコースからなり、これまで5番目まで終了。いつも3倍くらいの競争率のようだ。今、6と7の参加者を募集している。6はとてもユニー…

「リスク規制のための新しいアイデア」

ワシントンDCで6月22〜23日に開催(リンク)。メンバーも豪華だし、全部ぼくの守備範囲のトピックなので絶対におもしろいんだろうけど、逆に刺激は少ないかも(といってもどうせ出席できないんだけどね)。ちなみに、パネル1と2に出てくるOIRAは、OMBの中の…

カリフォルニア州が"Call-in Program"2物質を追加

カリフォルニア州DTSCが、Health and Safety Code, Chapter 699, Sections 57018-57020に基づき、1月22日、CNTsに関する情報提供を26の企業や研究機関に呼びかけた(リンク)。3月に入って、CNTsに加えて、"Call-in Program"に2物質を追加した(pdf)。1つは…

レーザープリンターから放出される微粒子

レーザープリンターから放出される微粒子が以前から問題になっていた。この微粒子はトナー起源だと想定されていた(ぼくもそう思ってた)けど、発生メカニズムや構成要素は特定されていなかった。Morawska氏らの研究で、トナーが紙に溶けて、高温のときある…

EPAの人事異動(George Gray氏)

米国EPAのOffice of Research and Development (ORD)のトップであったGeorge Gray氏が、新政権発足に合わせてEPAを去ったようだ。Gray氏はHarvard Center for Risk Analysisの前のセンター長(その前は設立者で同じくBush政権に入ったJohn Graham氏)。彼の…

[食品]食品分野でもとうとうリスク規制が始まるか?

遺伝毒性のある化学物質について、水道水には実質的に1992年、大気汚染物質には明示的に1996年に、発がんリスクレベルに基づく規制が導入された。遺伝毒性のない発がん性物質については無毒性量(NOAEL)に不確実性係数を適用するという形で参照値が設定され…

欧州のRiskBridgeプロジェクト

欧州委員会のFP6資金で実施されていたプロジェクトであるRiskBridgeが今年度で終了する。RiskBridgeの正式名称は、"Building robust, integrative inter-disciplinary governance models for emerging and existing risks"(新興および既存のリスクに対する…

カドミウム汚染米の疑惑は一件落着?

しばらく前は追いかけていたのだけどちょっと忘れていた間に、農水省から10月31日付でプレスリリース「カドミウム含有米の非食用処理に関する調査結果について」が出ていた。平成15年4月から20年8月までの分では、変形加工が適正に行われ、さらに、合板工場…

「攻めのリスク評価」は経営学の問題なのかもしれない

最近、新興リスクのガバナンスの鍵は企業の経営陣のリスクリテラシーの有無にかかっているという話をあちこちでしている。すなわち、不確実性に直面した場合に、予防という名のもとに委縮してしまうのではなく、企業自ら先手を打ってリスク評価を実施し、そ…

やっぱりカドミウム米も消えているのか?

[リスク]やっぱりカドミウム汚染米は危ないのかと思ったら 疑惑だけかと思ったら、今度は週刊ポスト10/10号にカドミウム汚染米の記事が出ている。見出しは「「汚染カドミウム米」も消えていた」。記事中ではいくつかの事実が判明している。 まず、農家からカ…

やっぱりカドミウム汚染米は危ないのかと思ったら

[リスク]カドミウム汚染米は大丈夫らしいが。 と書いたところだけど、週刊現代10月4日号の記事中のpp.152〜153には「カドミウム米も不正に転売か!?」という小見出しが。しかし読んでみると、特記すべき根拠があるわけではなく、「三笠フーズの事件を見れば、…

カドミウム汚染米は大丈夫らしいが。

事故米のニュースのときにまっさきに思い浮かんだのは「カドミウム汚染米は大丈夫か?」だった。0.4ppm以上1.0ppm未満のカドミウムが検出された米は食用に適さないとして工業用途に回されることになっているからだ。こっちの方が量としては圧倒的に多いだろ…

IARCモノグラフへのその他のリクエスト

Imperial Colledge Londonの環境疫学者であるVineis氏は、ストレス、気候変動、ハーブなどの代替薬品をリクエスト。気候変動で発がん?と疑問に思ったら、途上国での干ばつや洪水で土壌の成分が変わり、ヒトをがんから守るセレンなどの微量栄養素が減るかも…

米国EPAが鉛の大気環境基準値の大幅強化を提案

EPAは5月1日、現行の1.5μg/m3から0.10〜0.30μg/m3(代替案として0.10〜0.50μg/m3)への強化を提案。基準値の強化は1978年以来(30年ぶり)のことだけど、その間に実施された有鉛ガソリンの廃止によって大気中への鉛の排出は98%近く減ったそうだ。現在は様々…

いろんな化学物質の使用が禁止されつつあるメモ。

欧州で、臭素系難燃剤のDecaBDEの電気電子機器への使用が2008年6月30日から禁止(link)。 カリフォルニア州で、可塑剤のフタル酸の3歳未満の子供用のおもちゃへの使用が2009年1月1日から禁止(0.1%以上のDEHP, DBP, BBP、子供の口に入るものは0.1%以上のD…

ビスフェノールAの健康リスク

昨年来の米国でのビスA騒動は10年前の日本を見ているようだった。ビスAの危険性を煽る本が次々出たり、ビスAフリーのガラス製哺乳瓶が売り出されたり。単純に米国は日本の10年遅れなのか?それともこの動きは日本に再上陸するのか? NTPから"NTP Brief on Bi…

邦題は最悪だけど"Fatal Contact: Bird Flu in America"はお薦め!

過去記事:新型インフルエンザのハザードとリスクの大きさメモ(2008年2月3日) ここで触れた米国ABC TVが2006年5月に制作したテレビ映画"Fatal Contact: Bird Flu in America"を借りて見た。NHKのテレビ映画とは比べものにならないくらい良くできた作品だ。…