EPAとNSFが2つの新センター設立
米国EPAとNSFは、「ナノテク環境影響研究センター(Centers for the Environmental Implications of Nanotechnology:CEIN)」を2か所設立。EPAのプレスリリースのタイトルは「素晴しい新世界は大胆で新しい研究アプローチを必要とする」(リンク)。本部はそれぞれUCLAとDuke大学に置かれた。UCLAの方の略称はUC-CEIN、Duke大学の方の略称はCEINTとなっている。かなりの数の応募があったようだ。2008年9月1日〜2013年8月31日までの5年間の時限プロジェクト(延長の可能性はあるようだ)。申請の書類を見てみよう。
予測毒性学&リスク予測
UCLAのUC-CEINのセンター長はAndre E. Nel氏。予算規模は2800万ドル。12の研究機関が共同研究先として挙がっていて、シンガポール、ドイツ、アイルランド、スペインの研究機関も入っている。研究者も、工学、化学、物理、材料科学、生態学、分子生物学、海洋生物学、細菌学、粒子&化学毒性学、コンピュータモデリング、HTS(ハイスループットスクリーニング)、リスク予測など多様。研究目標は、工業ナノ材料の環境影響のための予測リスクモデルを開発すること。以下の7つの学際研究グループ(IRG)からなる。また、教育にも力を入れるようだ。
生態系影響のリスク評価
Duke大学のCEINTのセンター長はMark R. Wiesner氏。予算規模は1500万ドル。こちらは米国内の多数の大学と提携している。ナノ材料の環境影響リスクを評価するために役に立つ、生態系におけるナノスケール材料の動態を研究する。
CEINTの研究は3つの相互に関連したテーマとそれらを支える3つのコアからなる。
テーマ1.曝露:移動と変換
1)環境中に移行する工業ナノ材料の特性を究明する、2)工業ナノ材料の化学や副次的影響と凝集状態や環境中の移動と結びつける、3)環境中の残留性、移動、生物学的利用可能性を理解するための基礎としてのナノ材料の生物学的化学的変換をキャラクタライズする。
テーマ2.細胞と組織の応答
スクリーニング試験として生物学的利用可能性と毒性試験を実施し、構造活性モデルのためのデータベースを構築する。
テーマ3.ナノ材料の生態系の機能的応答
様々なレベルのリアルな生態系の複雑な性質とナノ材料の影響を、実験設備の流水システムや土壌マイクロコズムを使って究明する。
コアA.工業ナノ材料の製造とキャラクタリゼーション
CEINTの最初の対象物質は、炭素(フラーレンとCNT)、金属(Fe, Au, Ag)、酸化金属(TiO2, FeOx, SiO2, CeO2, ZnO)、硫化金属、量子ドット。これらは商業的に購入できるものもあれば、作成しなければならないものもある。
コアB. 環境中の天然および非意図的なナノ材料
これらの特性を究明し、同じ化学組成の天然物と人口物の間の差異を見つけ、環境中のナノ粒子の計測法を改善する。各種装置を使って発生源の特定にまでつなげる。
コアC.モデリング、リスク評価、社会的影響
実験で得られた情報を、モデルやリスク評価として統合する。また、ナノテク情報に対する社会の反応に関する研究も行う。