フランスでコントロールバンディングの報告書リリース

引き続いてフランスの話。欧州労働安全衛生機構(EU-OHSA)が1月25日、フランスの食品環境労働衛生安全庁(ANSES)の専門家がナノ材料向けのコントロールバンディングツール(Control Banding Tool)を開発したと発表した。ANSESの記事と報告書本体はここからリンクしている。報告書のタイトルは「ナノ材料のために特化したコントロールバンディングツールの開発」で、日付は2010年12月となっている。コントロールバンディングとは、MSDS程度の情報しかない場合に、それらの情報からリスク管理手法を選択するための簡易な意思決定ツールであり、主に中小企業向けである。リスク管理手法は、有害性バンドと曝露バンドの組み合わせで決まる。通常、それぞれ4〜5程度のバンドが設定される。


今回提案されたバンドを見てみると、有害性バンドはHB1(非常に低い)〜HB5(非常に高い)までの5段階、曝露バンドは曝露ポテンシャルとして表現され、EP1〜EP4の4段階(個体、液体、パウダー、エアロゾル)である。これらを組み合わせると20通りの組み合わせがあり、それぞれに対してCL1〜CL5までの5段階の対策レベルが用意されている。

  • CP1:自然あるいは機械的な一般的排気
  • CP2:局所排気
  • Cp3:囲い込み排気
  • CP4:封じ込め
  • CP5:封じ込めと専門家による審査

最も議論となるのが有害性バンドである。図5にはバンドを判断するためのフローチャートがあり、「製品はナノ材料を含んでいますか?」にYes、「そのナノ物質は関係当局によって既に分類されていますか?」にNoとなれば、続いて「それは生体残留性のファイバーですか?」という問いが来る。これにYesと答えると即座に有害性バンドの一番高いHB5に分類されることになる。


問題は「ファイバー」と「生体残留性」の定義であるが、本報告書にははっきりしたことは書かれていない。フローチャートのさらに下にある「物質の溶解時間が1時間未満かどうか」という問いは生体残留性に関係するかもしれない。ちなみに、2010年12月にマレーシア、クアラルンプールで開催されたISO TC229の総会での、WG3のPG8会合(まさにフランス人がリーダーでコントロールバンディングの規格を作ろうとしている)では、WHOのファイバーの定義である「5マイクロメートル以上」が提案されたそうだ。また、「生体残留性」という言葉について注7には、生体残留性の定性的な説明のあと、「定義は定性的であるが、労働衛生文献は、反する証拠がない限りすべての吸入性で生体残留性のあるファイバーはアスベストとみなして取り扱うべきであると示唆しているようなので、それ(=生体残留性)非常に重要である」と書かれている。要するに、何らかの追加的な(動物実験等の)有害性の調査が行われていなければ、アスベストと同等とみなす(デフォルトをアスベストとする)ということだ。