コンサル会社が企業の自主管理を促す

ナノテク専門のコンサル会社であるLux Researchが,会員企業向けに「ナノテクの環境・健康・安全(EHS)リスクに行動を起こす」という報告書を作成した.内容はし会員しか読めないが,ニュース記事で中身はだいたい分かる.LuxのアナリストのHolman氏によると,企業が直面するナノテクリスクは3つあるという.

  1. ヒトや環境への実体的なリスク(real risk)→しっかり管理する.
  2. 主観的リスク(perceptual risk)→理解する.これは,実体的なリスクの有無とは無関係に,ナノ製品の社会受容性を弱める可能性がある.
  3. 規制のリスク→動向を把握する.

これらについて,企業が戦略的に対応できるために,産業,学術,NGOから17人,行政機関から10人,5人の新興企業CEO,10人の大企業の代表にインタビューが行われた.その結果分かったことは次のとおり.

  • 実体的なリスクについては科学的研究がまだまだ不足している(工業ナノ材料のリスクに関するピアレビュー論文は316しかない,そうだ)が,実体的なリスクを軽減するために必要なことは,1)企業内で使用されているナノ材料の目録を作成する,2)それらの用途と製品のライフサイクルにわたるナノ粒子への曝露可能性を明らかにする,3)曝露と利用可能なハザード情報に基づき,用途ごとのリスクをキャラクタライズする,4)曝露の抑制,追加的な試験,製品の再設計などを通してリスクを軽減する.
  • 主観的なリスクについては現在のところ人々は知識が不足しているにもかかわらずポジティブにとらえている(日本も同じだ).しかし,マスメディア報道やNGOからは懸念の声があがることもあるので,企業としては自らの安全性研究を共有してもらい,信頼を受けたパートナーと協働し,ナノテクがもたらすベネフィットを説明するためのコミュニケーション戦略が必要だ.
  • 規制がどのような形で導入されるか分からないが,各省庁は動き始めている.EPAなどの動きを予測することが必要だ(そして必要な場合には働きかけていくことも必要だ,ということだろう).