2006-07-01から1ヶ月間の記事一覧

映画に見る「リスク論」

『経済セミナー』(日本評論社)の7月号の特集が「映画にみる「経済」」.常々,映画に見る「リスク論」をまとめてみたいと考えている.いつもネタに使うのは,タイタニック号における救命ボート問題だ.乗客の半分の数しか救命ボートに乗ることができないと…

リスク評価とLCIA

Human and Ecological Risk Assessment Vol.12, No.3 June 2006は,特集「ヒトおよび生態リスク評価とLCA:相互関係,対立点,将来の方向性」.その中に,リスク評価とLCIA(ライフサイクル影響評価)の関係を論じた論文があって,両者の特徴をテーマごとに…

「環境の金銭的価値」もコンセンサス会議のテーマに

デンマークの技術評価局が行っているコンセンサス会議は1987年以降20テーマを超えるのだが,2003年に実施された最新の会議のタイトルは「私たちはどのようにして環境に価値を付けるのか?」(How can we assign value to the environment?)であり,まさに環…

コンセンサス会議

小林傳司著『誰が科学技術について考えるのか:コンセンサス会議という実験』名古屋大学出版会(2004年)を単なる読み物としてではなく,ナノテクノロジーについてコンセンサス会議を実施することを想像しながら読んだ.2,3年以内に本当に実施することになる…

米国のナノテク予算

下院でナノテク予算が通過.NNIの要求どおり認められたらしい.総額は2005年実績が12億ドル,2006年と2007年が13億ドル.このうち,NSF,DOD,DOEで4分の3を占める.NIHは13%,NISTは6%,EPAは1%に満たない.このうち「社会的側面(social dimensions)…

「ナノテクノロジー:リスクに対処するための研究戦略」の7つの提言

Woodrow Wilson International Center for ScholarsのProject on Emerging Nanotechnologies (PEN)からまた重要な報告書"NANOTECHNOLOGY: A Research Strategy for Addressing Risk"が出た.著者はAndrew D. Maynard.現在のNNIのもとでのリスク評価は付録の…

「誰が電気自動車を殺したのか?」

町山氏が7/18(火)のストリーム・コラムの花道で紹介した映画,"Who Killed the Electric Car?"(公式サイト).GMは10年前にEV1という電気自動車を発表し,1000台ほど一般にリースしたのだが,突然回収されEV1は歴史から「なかったこと」になってしまった…

神の見えざる手?

ふと思った.原油高騰による強制的な省エネは「神の見えざる手」なのかもしれない. 欧州での排出権取引市場では現在CO2が1トンあたり17ユーロ(2500円),日本企業が行うCDMは1トンあたり700〜1000円あたり.ここから換算すると,CO2の排出1kg分をオフセッ…

ヒトゲノム計画のELSI研究

米本昌平著『バイオポリティクス:人体を管理するとはどういうことか』中公新書. 第2章でヒトゲノム計画の話が出てくるのだが,大きな予算が付けられる際の話として次のように書かれている. ・・・倫理的,政治的な面からこの研究計画を危険視する意見が続出…

環境税の議論を現実が超えていく

原油価格がまた最高値を付けた.こうなると環境税の議論が完全に霞んでしまう.完全に現実が超えてしまっているからだ.以前書いたように,「環境省が昨年10月に提案した環境税は,ガソリン1リットルにわずか1.52円の上乗せ」でしかない.現実のガソリン価格…

全米科学アカデミー(NAS)によるダイオキシン類のリスク評価

National Academies Pressから“Health Risks from Dioxin and Related Compounds: Evaluation of the EPA Reassessment”が刊行された.ウェブ上では1ページずつ読める.EPAが作成した2003年のリスク評価書ドラフトがなかなか前進しないために,2004年10月にN…

英国の科学技術委員会(CST)がレビューを開始

2004年7月にRoyal Society and Royal Academy of Engineeringが共同で「ナノサイエンスとナノテクノロジー:機会と不確実性」を発表し,これを受けた政府が2005年2月に回答書を提出した.今回は政府の対応(ナノテク政策)がきちんと進んでいるかどうかチェ…

ナノ関係のイベントまとめ

IRGCのリスクガバナンス会議「ナノテクノロジーのリスクガバナンス:世界的問題を管理するための勧告」が7月6〜7日にスイスで開催.プログラムを見ていると,ナノテクノロジーの潜在的なリスクを2つのフレームに分けて検討したようだ.フレーム1は「比較的…

「サイズが問題だ」

Friends of the Earth (FoE) Australiaのニュースレター6月号がナノテク特集で,表紙には大きく”SIZE DOES MATTER”(サイズが問題だ)と書かれている(pdf).「ナノテクノロジーに対するFoEオーストラリアの立場」(p.45)において,適切な規制が実施される…

インターネット時代に生き延びるアンケート調査の古典

郵送や電話によるアンケート調査のためのガイドブックの古典といえば,Don A, Dillman氏の1978年の著書「郵送と電話によるアンケート調査」("Mail and Telephone Survey: The Total Design Method")だけど,なんと,2000年に「郵送とインターネットによる…

社会科学のフロンティア

Science誌に載った「社会科学におけるいくつかのフロンティア」という展望論文(Science 312: 1898-1900, 30 June 2006).全体のテーマは「複雑な相関関係の記述から役に立つ予測へ」となっていて,具体的に6分野が挙げられている.どれも興味深い. Longit…

米国EPAの研究発表会

EPA Science Forum 2006が5月16〜18日に開催された.テーマは”Your Health, Your Environment, Your Future”.これはEPAのNational Center for Environmental Assessment (NCEA)の研究者たちの発表会で,各々ポスター1ページずつ.興味あってプリントアウト…

環境パフォーマンスと財務パフォーマンスの関係

環境パフォーマンスと財務パフォーマンスの間の関係にはいろいろ怪しい点があるが,もし環境に配慮した企業であることを売りにすることで売り上げが伸びたという事実があったとしても,それを環境パフォーマンスが財務パフォーマンスに正の影響を与えたと一…

ジダン

なぜみんなあれを「頭突き」と呼ぶんだろう?どう見ても「ヘディング」じゃないか!だったら,試合中のヘディングも全部「頭突き」って呼ぶのか?

ナノリテラシー

Building nanoliteracy in the university and beyond (Nature Biotechnology) ”nanoliteracy"は,「ナノ」と「リテラシー」から作られた造語で,ナノテクの科学的側面だけでなく,社会的・倫理的側面まで含めて包括的に理解していることを指す.ナノリテラ…

グーグル・トレンドを使う

Who really cares about nanotechnology? (Nanowerk Spotlight) グーグル・トレンドを使うと,2004年以降の検索件数の推移や節目のニュース記事や地域別の解析などが行える.そこでわかったことは,"nanotechnology"と検索する人はあまり増えていないし,そ…

ユネスコとナノ倫理

UNESCOが"The Ethics and Politics of Nanotechnology"という小冊子を刊行.pdfでダウンロード可能(link).ほかにも,Jean-Pierre Dupuy氏による"The Philosophical Foundations of Nanoethics. Arguments for a method"(link)も. ついでに,"The Precau…

日本のナノリスク研究

ナノ物質の安全性を研究 厚労省が毒性など検証(Sankei Web)

ドイツが製品リスクの調査を開始

ドイツの連邦リスク評価研究所(Federal Institute of Risk Assessment (BfR))は,食品や化粧品をはじめとする様々な日用品へナノテクが応用されることから生ずるリスクについてシュトゥットガルト大学に調査を委託した.調査を行う主体は,大学内の「文化…

米国のオゾン環境基準値見直し

5月に出ると言われていたStaff Paperがまだ出ない.米国ではクライテリア汚染物質と呼ばれる6種類の大気汚染物質の環境基準値はNAAQSと呼ばれ,5年ごとに最新の科学的知見をまとめることが義務付けられている.まず科学的知見を集めたCriteria Documentと呼…

ハピネス研究の落とし穴

Kahneman氏らはScience誌に載った論文で,世の中が思っている所得と幸福の関係のうちの大部分が幻想であることを指摘している.Kahneman, D., Krueger, A. B., Schkade, D., Schwarz, N. and Stone, A. A. (2006). Would You Be Happier If You Were Richer?…