2008-01-01から1年間の記事一覧

Bayer社のMWCNT製品である"Baytubes"が「米国EPAから承認」

Bayer MaterialScience社からの12月19日付のプレスリリースによると、彼らの多層カーボンナノチューブ(MWCNT)製品である"Baytubes"が「米国EPAから規制上の承認を得た」という。プレスリリースの文章を読む限り、これはSwanと同様、同意命令(Consent Orde…

Nature Nanotechnology誌にリスク認知に関する3本の論文

Nature Nanotechnology誌にリスク認知に関する論文が3本出た(いずれも電子版)。1本目はScheufele氏(University of Wisconsin―Madison)らによる「欧州と米国におけるの宗教的信条と一般人のナノテクノロジーへの態度」で、ナノテクへの道徳的な受容と宗教…

RCEPの「環境中における新規材料:ナノテクノロジーのケース」付録

付録がAからJまで付いており、そこから気になった点をメモ。 付録Bはヒアリング先一覧。日本には2007年11月に来たようだ。対象となった組織はけっこう多いが、個人はゼロ。公的機関としては、経産省、文部科学省、厚労省、独立行政法人 物質・材料研究機構、…

RCEPの「環境中における新規材料:ナノテクノロジーのケース」:本文

王立環境汚染委員会(Royal Commission on Environmental Pollution: RCEP)は、王室、政府、技官、一般人に対して環境問題に関する助言を行うために、1970年に設立された独立委員会。11月12日に、第12次の報告書が発表された(リンク)。タイトルの「環境中…

カドミウム汚染米の疑惑は一件落着?

しばらく前は追いかけていたのだけどちょっと忘れていた間に、農水省から10月31日付でプレスリリース「カドミウム含有米の非食用処理に関する調査結果について」が出ていた。平成15年4月から20年8月までの分では、変形加工が適正に行われ、さらに、合板工場…

英国のWhich?が化粧品におけるナノ粒子についての報告書を発表

Which? "Small Wonder: Nanotechnology in Cosmetics"(pdf) 英国系のメディアで、化粧品のナノ粒子の話題が盛り上がっている。特に、Daily Mail「ナノ粒子を使ったビューティクリームはあなたの体に毒かもしれない」はセンセーショナルに取り上げている。情…

Thomas Swanが、MWCNTに続いてSWCNTの同意指令を受けた。

Thomas Swan & Co. Ltd.が、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)(ブランド名、Elicarb)についてPMNを提出し、EPAから同意指令(Consent Order)を受けたことは以前書いたが、続いて、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)についても同意指令を受けた(同社のプ…

米国と英国での一般人への地球温暖化リスク認知アンケート調査

日本では、テレビはCMも報道もバラエティもエコエコしてるが、一方で、人為的温暖化説への懐疑本がたくさん出ている。一般人の地球温暖化リスク認知はどうなっているのかとても興味がある。1990年くらいから毎年定点調査をやっておくべきだった!今からでも…

論文「構造的欠陥が多層カーボンナノチューブの急性肺毒性に大きな役割を果たす」

2008年10月29日付けのEDFのCal Baier-AndersonのBlog記事「A.長さ、B.金属、C.酸素、D.表面、E.これらすべて?」は、CNTの有害性に影響する物理化学的特性について、Chemical Research in Toxicology誌の9月号に載った2本の論文を紹介している。アブストだけ…

論文「カーボンナノチューブの抗菌効果:サイズが問題だ!」

Kang, S., Herzberg, M., Rodrigues, D. F. and Elimelech, M. (2008). Antibacterial effects of carbon nanotubes: size does matter! Langmuir 24(13): 6409-6413. "Size does matter!"という主張が入ったタイトルが気になり読んでみた。不純物を除いてキ…

今度はTSCAのSec.8を使った有害性情報収集の話

今度はTSCAのSec.8("Reporting and retention of information")だ。TSCAには様々な条項があって解釈や利用をめぐっていろいろな議論が可能だ。それに比べて日本の(現行の)化審法は単純明快だ。単純過ぎて面白みに欠けるとも言える。 TSCAのSec.8の(e)は"N…

CNTのTSCAインベントリステータスについての官報通知

10月31日、EPAは官報通知(Federal Register Notice)を発表した。 Toxic Substances Control Act Inventory Status of Carbon Nanotubes (pdf)。 カーボンナノチューブ(CNT)は、グラファイトをはじめとする炭素の既存の同素体とは異なる化学物質であり、T…

「攻めのリスク評価」は経営学の問題なのかもしれない

最近、新興リスクのガバナンスの鍵は企業の経営陣のリスクリテラシーの有無にかかっているという話をあちこちでしている。すなわち、不確実性に直面した場合に、予防という名のもとに委縮してしまうのではなく、企業自ら先手を打ってリスク評価を実施し、そ…

欧州では化粧品中ナノ材料についての自主的報告制度が始まる

2008年9月10日、欧州委員会(EC)は、ナノスケール物質とそれらが使われた最終製品(化粧品)に関するデータを提出することを事業者に依頼した(pdf)。情報提供の期間は、2008年12月31日までとなっている。 背景として2つの報告書が挙げられている。1つは、2…

英国Defraによる自主的報告スキーム(VRS)のパイロット期間が終了

英国の自主的報告制度の正式な制度名は"Voluntary Reporting Scheme (VRS) for Manufactured Nanomaterials"、すなわち「工業ナノ材料についての自主的報告スキーム」で、環境食糧地方問題省(Defra)が実施している(ウェブページ)。パイロット期間は、2006…

とうとう始まったTSCAによるナノ材料規制(その4)

Environmental Defense FundのRichard Denison氏は10月13日付けブログの中で、いくつかの懸念を示している。 SwanがMWCNTの生産を始めると、MWCNTはTSCAインベントリに載る。そうすると、今後だれでも、EPAに知らせることさえせずにMWCNTを生産使用できるし…

とうとう始まったTSCAによるナノ材料規制(その3)

(続き)同意指令には、命じられた動物試験の結果がどのようなものであるかにる対応があらかじめ記述されているのでメモ。 試験結果が科学的にあいまいだったら…:製造や輸入は、生産制限を超えて継続できる。しかしその他の制限から解放されるには、再試験…

とうとう始まったTSCAによるナノ材料規制(その2)

同意指令において、EPAがSwan Chemicalsに要求した項目の要旨は以下のとおり(同意指令では会社名も秘匿扱いだったけど、Thomas Swan & Co. Ltd.がプレスリリースで自慢したためにバレてしまった)。8つある。 PMN物質のサンプルを1グラムにMSDSの写しを付…

とうとう始まったTSCAによるナノ材料規制(その1)

TSCA(Toxic Substances Control Act)と工業ナノ材料の関係については様々な議論があるが、工業ナノ材料は「新規化学物質」であるか「既存化学物質」であるかという問いに対して、EPAは「ナノスケール材料のTSCAインベントリステータス−一般的アプローチ」…

EPAによる「ナノスケール材料スチュワードシッププログラム(NMSP)」のまとめ(その4)

1つずつ見ていくと切りがないので、気になった点をメモ。 Arkemaは、MWCNT。EPAのフォームじゃなくて、DuPontの"Nano Risk Framework"のフォーマットを使ってる。 DuPontからは二酸化チタンを使った製品"Light Stabilizer"に続いて、セピオライト(含水ケイ…

EPAによる「ナノスケール材料スチュワードシッププログラム(NMSP)」のまとめ(その3)

基礎的プログラムへの参加企業とともに、さらに10社が「参加の意思のある企業」として名を連ねている。EPAは今後さらに18ヶ月にわたり提出を受け付けることとしたようだ。日本企業としては昭和電工の名前がある。 Angstron Materials eSpin Technologies Evi…

EPAによる「ナノスケール材料スチュワードシッププログラム(NMSP)」のまとめ(その2)

では、具体的に提供された情報の中身を見てみよう。プログラム参加企業一覧はウェブ上で見ることができる。22社のうち2社は匿名である。しかし、93物質中63物質(ぼくの計算では65物質になった)がStrem Chemicals社1社によるものである。つまり、Strem Chem…

EPAによる「ナノスケール材料スチュワードシッププログラム(NMSP)」のまとめ(その1)

まず、Nanoscale Materials Stewardship Program(NMSP)についての基礎知識をまとめておこう。NMSPは2008年1月29日にスタートした、ナノ材料を扱っている企業による自発的な情報提供プログラムである。ここではナノ材料がTSCAにおいて新規化学物質であるか既…

最近のナノ小ネタメモ

マンチェスターで9月に「ナノテク、社会、政策」というワークショップ開催 "Manchester International Workshop on Nanotechnology, Society and Policy"が9月9〜12日に開催された。主催はここ。プレゼン資料はウェブサイトからすべてpptファイルで見ること…

やっぱりカドミウム米も消えているのか?

[リスク]やっぱりカドミウム汚染米は危ないのかと思ったら 疑惑だけかと思ったら、今度は週刊ポスト10/10号にカドミウム汚染米の記事が出ている。見出しは「「汚染カドミウム米」も消えていた」。記事中ではいくつかの事実が判明している。 まず、農家からカ…

やっぱりカドミウム汚染米は危ないのかと思ったら

[リスク]カドミウム汚染米は大丈夫らしいが。 と書いたところだけど、週刊現代10月4日号の記事中のpp.152〜153には「カドミウム米も不正に転売か!?」という小見出しが。しかし読んでみると、特記すべき根拠があるわけではなく、「三笠フーズの事件を見れば、…

カーボンナノチューブでがんが生じたり治ったり??

以前、マウスへの腹腔内投与実験の結果をもとに、毎日新聞が「ナノチューブでがん」という見出しの記事を書き(2008年3月7日)、その話題は5月にNHKでも放送された。今度は「カーボンナノチューブでがん細胞を死滅」というニュースをNHKがやっていた(2008年…

カドミウム汚染米は大丈夫らしいが。

事故米のニュースのときにまっさきに思い浮かんだのは「カドミウム汚染米は大丈夫か?」だった。0.4ppm以上1.0ppm未満のカドミウムが検出された米は食用に適さないとして工業用途に回されることになっているからだ。こっちの方が量としては圧倒的に多いだろ…

EPAとNSFが2つの新センター設立

米国EPAとNSFは、「ナノテク環境影響研究センター(Centers for the Environmental Implications of Nanotechnology:CEIN)」を2か所設立。EPAのプレスリリースのタイトルは「素晴しい新世界は大胆で新しい研究アプローチを必要とする」(リンク)。本部はそ…

最近のナノリスクイベント3件

NANO RISK ANALYSIS: Advancing the Science for Nanomaterial Risk Management 9月11〜12日までワシントンDCで開催されたワークショップ。SRAのEmerging Nanoscale Materials Specialty Groupがスポンサー。リスク分析という視点で切り込んでいることとディ…