2009-01-01から1年間の記事一覧

社会的課題と技術革新の関係についての話

心の師匠であるMaynard氏のブログ追っかけをちょっとサボってたら先月からかなり刺激的な展開になっている。11月にDubaiのWorld Economic ForumのSummit on the Global Agendaに参加したあたりから。 ここでは招待された15〜20名ずつからなる80個近くの"Coun…

twitterと科学コミュニケーション

最近やっとブログとtwitterの使い方が自分なりに整理できてきた。ぼくがtwitterを知ったのはAndrew Maynard氏のブログだった。MaynardさんがTwitterを使って科学コミュニケーションに挑戦したのが、ちょうど1年前の2008年12月(リンク)。5日間続けて毎日5つ…

食品ナノテクはどんな方向に進むんだろうか?

先週、東京国際フォーラムで、食品安全委員会セミナー「食品分野におけるナノテクノロジーの今−世界の動きを中心に−」を聞いてきた。あんまり客がいないかと思ったら満席だった。 茨城大学農学部の立川氏が最初にイントロ、世界各国の法規制の現状、市民参加…

行動経済学会でLoewenstein教授の講演を聞く。

いい講演はいい触媒になる。聞きながらいろんなことを思いついてメモした。George Loewenstein教授はその守備範囲の広さと新しいものへの感度の鋭さにいつも脱帽させられるんだけど、彼の中でいまホットな行動経済学ネタは、"Nudge"系の話だったことにちょっ…

Society for Risk Analysis(SRA)の年会がボルチモアで開催

今週は米国ボルチモアで、Society for Risk Analysis(SRA)の年会が開催された。今年はパスしたのだけど、もし参加してたらこのセッションに出てただろうなというものを、プログラムを見ながら妄想。 月曜日 10:30からのセッションでは、"M2-I Symposium: N…

ナノテク市民討論会と反対運動

フランスでは、2009年10月15日のストラスブルグを皮切りに、2010年2月23日のパリまで、フランス全土で全17回の市民討論会が開催されている。主催は、市民討論委員会(Commission of Public Debates: CPDP)で、毎回テーマが違うそうだ。 その第8回目がグルノ…

欧州理事会で化粧品規制」が採択。

11月、欧州理事会で「化粧品に関する欧州議会と欧州理事会の規制」("REGULATION OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL on cosmetic products")が承認された。前文はpdfで読める。欧州議会で採択されたときに書いた内容とだいたい同じだけどもう…

銀ナノ粒子の規制に関する論点のメモ

Chemical & Engineering Newsに銀ナノ粒子の問題がまとめてあったので抜粋メモ。 米国EPAは、抗菌目的で利用される銀ナノ粒子をFIFRA(連邦殺虫剤・殺菌剤・殺鼠剤法)のもとで規制する(=安全性についてのデータを要求できる)権限を持っている。産業界の…

「ナノ粒子が細胞壁を越えてDNAを損傷しうる」

Nature Nanotechnology誌のオンライン版にまた注目論文が掲載された。タイトルは「ナノ粒子が細胞壁を越えてDNAを損傷しうる」で、著者は英国の研究者たち。"can"が微妙な感じの煽り系のタイトルだ。内容は「新規なメカニズムで」と言ってるだけあってなかな…

吸入したMWCNTがマウスの胸膜下組織に到達

Nature Nanotechnology誌のオンライン版に「吸入したカーボンナノチューブがマウスの胸膜下組織に到達」というタイトルの論文が掲載された。North Carolina州立大学のグループによる。これまでは腹腔内に投与したMWCNTの影響が議論されていたが、本論文は吸…

HSDBに7つのナノマテリアルが登録

米国National Library of Medicine(NLM)のToxicology Data Network (TOXNET)のHazardous Substances Data Bank(HSDB)に7つのナノマテリアルが追加された。HSDBには5000種類以上の化学物質データが登録されている。 Carbon Nanotubes Fullerenes Silver N…

1歳児にインフルエンザワクチン接種が必要かどうか。

厚生労働省の新型インフルエンザの優先接種対象者には、医療従事者、妊婦、基礎疾患を有する者に続いて、「小児(1歳〜就学前)」が挙がっている。ちなみに1歳に満たない場合は本人ではなくその両親が対象となる。つまり、「1歳児」と「1歳未満」の間に線が…

米国議会でジオエンジニアリングの社会的影響に関する公聴会開催

英国Royal Societyが2009年8月に報告書"Geoengineering the climate: Science, governance and uncertainty"を発表し、ジオエンジニアリングはトンデモ話でなくリアリティある1つの地球温暖化対策であり、その効果と潜在的なリスクを事前にきちんと評価しな…

欧州委員会の法規制ギャップ調査

10月9日、欧州委員会の環境コミッショナーのDimas氏はスピーチの中で、欧州委員会は、製品のライフサイクルを考慮した欧州レベルでのREACHも含めた法規制ギャップ調査を2年以内に完了させると発言。これは4月24日に欧州議会が可決した決議案を受けてのもの。

ドイツ連邦環境庁の報告書をきっかけにしたナノリスク騒ぎ

ドイツ連邦環境庁(UBA)が10月21日に発表した報告書をもとにした新聞記事がドイツでちょっとした騒ぎになっているようだ。まず元のプレスリリースがこれ。ドイツ語だけどGoogle Translateで英語にすれば完璧に読める。ただし、この記事の最後にリンクされて…

「21世紀における毒性試験:ビジョンと戦略」その後(4)

NRCからの報告書を受けて、専門誌での議論も始まった。Risk Analysis誌では、2009年4月号において特集されている。他方、Toxicological Sciences誌では、Forum Seriesとして、2009年2月号から毎号様々な論点からのコメントがシリーズとして現在も進行中であ…

「21世紀における毒性試験:ビジョンと戦略」その後(3)

2009年5月11〜13日、ワシントンDCのNational Academy of Sciencesで「毒性経路ベースのリスク評価に関するシンポジウム: パラダイム変化に備える」が開催された。3日間のプレゼン資料のほとんどがウェブサイトから見ることができる。このテーマでプレゼンで…

「21世紀における毒性試験:ビジョンと戦略」その後(2)

米国環境保護庁(EPA)は、NRCの報告書を受けて、庁内ワークグループ、"Future of Toxicity Testing Workgroup (FTTW)"を立ち上げ検討を行い、「化学物質の毒性評価のための戦略計画」を2009年3月発表(リンク)した。戦略計画は3つの要素と8つの戦略目標から…

「21世紀における毒性試験:ビジョンと戦略」その後(1)

2008年2月14日、米国環境保護庁(EPA)、米国国立衛生研究所化学物質ゲノミクスセンター(NCGC)、米国環境健康科学研究所(NIEHS)が5年間の覚書(MOU)に署名、コラボレーションを発表した。EPAは2005年に、National Center for Computational Toxicology(…

「21世紀における毒性試験:ビジョンと戦略」報告書

現在の毒性試験の体系は生物学やバイオテクノロジーなどの科学の進展を適宜取り入れて発展してきたんだけど、リスク評価&管理の全体に照らして適切かどうかという評価はやってこなかった。そろそろ一度全体を見直さなくちゃ、ということで、米国環境保護庁…

オバマ政権の新しい化学物質管理原則を発表

米国EPAのLisa Jackson長官は、29日のスピーチの中で、オバマ政権の化学物質管理の哲学を表した「化学物質管理法制の改革のための基本原則」を発表した。これは具体的には1976年に制定されたTSCA(Toxic Substances Control Act)の改革の方向性を意味する。…

英国下院の「ナノテクと食品」ヒアリングシリーズ

英国House of Lordsの科学技術小委員会の"nanotechnologies and food"のヒアリングシリーズ。2009年3月31日に始まって7月14日まで12回続いた。毎回テーマを決めて専門家や関係者を数人ずつ呼んで1時間半程度実施。そのメンバーが豪華。5/5にはエジンバラ大学…

ナノリスク関連イベント

2009年8月26〜29日 4th International Conference on Nanotechnology ? Occupational and Environmental Health (Helsinki, Finland) 2009年9月6〜9日 4th International Conference on the Environmental Effects of Nanoparticles and Nanomaterials (Vien…

公的資金によるナノリスク研究プロジェクトの省庁横断発表会

米国環境保護庁(EPA)が主催で11月9〜10日にラスヴェガスで開催される(アジェンダにリンク)。誰でも聞きに行ける。プレゼンされる研究のスポンサーは、EPA、NSF、NIH/NIEHS、NIOSH、DOEとほぼ全部そろっている。発表は、金属&炭素系ナノマテリアルとその…

「ナノテク安全についてみんなが知っておくべき10のこと」

Andrew Maynard氏がヘルシンキで8月末に開催された第4回ナノテクノロジー国際会議−労働安全衛生(NanOEH2009)の終わりのスピーチで話した内容がブログにアップされたので適当にメモ。 10.「ナノテクノロジー安全」のようなものは存在しない。 「ナノテクノロ…

欧州のヴァーチャルインフラ施設、EUMINAfabがスタート。

EUMINAfabが9月1日スタート(ニュース記事)。使用提案の届け出が始まる。EUMINAfabは、EU8カ国の10組織にある36のマイクロ&ナノテクノロジーのハイテク設備が、科学者や企業の技術者に向けて、オープンアクセスで自由に使えるもの。審査に通れば使用料は無…

今度はナノ粒子とアルツハイマー病を結び付ける報道

ことの発端は、英国Ulster大学が8月24日に「画期的な研究がナノ粒子とアルツハイマー病を結び付ける」というプレスリリースを発表したことだった。これを受けて、例えば「サンスクリーンがアルツハイマー病につながっているかもれないと専門家が言う」とか「…

論文本体その2:ナノ粒子への曝露によって労働者が死亡したとする論文

論文に載っている基礎的情報をメモ。 印刷工場の同じ部署で働いていた7人の若い女性患者は、5〜13ヶ月の曝露ののち2007年1月から2008年4月にかけて北京Chaoyang病院を訪れた。彼女たちはその前に地域の病院において複数の胸腔穿刺、抗生物質、抗結核薬、メチ…

論文本体その1:ナノ粒子への曝露によって労働者が死亡したとする論文

Song, Y., Li, Y. and Du, X. (2009). Exposure to nanoparticles is related to pleural effusion, pulmonary fibrosis and granuloma. European Respiratory Journal (Published online before print August 20, 2009).ようやく論文本体を読んだので感想を…

報道その1:ナノ粒子への曝露によって労働者が死亡したとする論文

昨日ウェブに掲載されると言われていた論文はまだアップされない。一番詳しく紹介しているのは、SAFENANOのエディターであるBryony Ross氏のまとめかな。論文公表を前提にどんどん報道は増えていく。もしかして専門家からの批判を受けてERJ誌側が慎重になっ…