ハッピー・プラネット指数(HPI)

バヌアツという地味な国が1位になったことで,日本のメディアにも紹介されたが,その多くが間違って報道していた.例えば・・・

ハッピー・プラネット指数(Happy Planet Index: HPI)はけっして「幸福度」や「住みやすさ」の指数ではない.「環境負荷をできるだけ小さく,満足度をできるだけ大きく」を達成している国,つまり,1単位の幸福を獲得するために犠牲にしている環境を最小にしている国のランキングなのだ.基本的な考え方は費用効果分析と同じで,効率性の指標だ.
HPINew Economics Foundation (nef)が開発し,3つの指標から計算される(link).
簡単に言うと,HPIは,「生活の満足度×平均寿命÷エコロジカル・フットプリント」で表される.「生活の満足度×平均寿命」は幸福年数(Happy Life-Year: HLY)と呼ばれる.これが大きいほどHPIは増える.逆に,エコロジカル・フットプリントで表される環境負荷が大きいほどHPIは少なくなる.HPIとは,「環境負荷1ヘクタールで得られる幸福年数」となる.
実際の計算は以下のような手順でやる.

  • 生活の満足度は0〜1の間に換算する.
  • 平均寿命は25〜85年の間を0〜1として換算する.例えば70年なら,(70-25)÷60=0.75となる.
  • エコロジカル・フットプリントは0〜15 ghaの間を0〜1として換算し,定数(0.252)を足す.
  • こうして得られた「生活の満足度×平均寿命÷エコロジカル・フットプリント」を,「生活の満足度満点,平均寿命85年,エコロジカル・フットプリント1.8 gha」の場合を100点になるように定数倍する.

こうして最後の定数倍は37.2倍となるのだが,他の例を再現しようとすると少しだけ過小評価になってしまう.何か間違いがあるのかもしれないが,今のところ不明.また,「生活の満足度」の指標は入手できなかった国が多数あり,48カ国の数値は既知の国の回帰分析から求められた(バヌアツもここに含まれていると思われる).
日本は,「生活の満足度が0.62,平均寿命が82.0年,エコロジカル・フットプリントが4.3 gha」であるので,上記のように計算すると,HPIは40.7と計算される(実際は41.7).これで95位.
また,個人のHPIも計算してくれるページもある(link).ただし,英語の質問の選択肢をたくさん選ばなくてはならない.ちなみにぼくのHPIは52.9でした.日本平均の41.7を上回ったので良しとしよう.