持続可能性

移動距離よりも生産方法

ES&T誌に載ったWeber and Matthews (2008)は、最近あちこちで言われていることだけど、地球温暖化対策には、フードマイルズ(移動距離)よりも、どのようにして生産されているか(生産方法)の方が大事だということを示した論文(news)。フードマイルズは日…

"Big Green Challenge"(賞金100万ポンド)と"Virgin Earth Challenge"(賞金2500万ポンド)

炭素排出を60%以上も減らすような優れたアイデアを募集し、上位10名までに総額で100万ポンドがそれらのアイデアの実現のために送られるという企画"Big Green Challenge"が英国で始まった。1位にはそのうち20万ポンドが与えられる。アイデアのエントリーは2…

貧困と人間発達

米国National Institute of Health (NIH)が,"Council of Science Editors' 2007 Global Theme Issue on Poverty and Human Development"というイベントを立ち上げた.10月22日に開催され,もうwebcastで字幕付きで見れる(realplayer).JAMAやBMJを始めと…

DVD「不都合な真実」の中の名言と誤訳

「不都合な真実」を見た.少し違和感があったのが,ゴア氏は気候変動の問題を,我々vs.地球という文脈で語るけれど,ぼくは我々vs.将来世代と捉えたいと考えているというギャップ.一番感銘を受けたのはゴア氏のスライドショーの準備シーン.聞き手の理解を…

地球温暖化阻止テロ?

「温暖化の秘密計画で英に」テロ炎上車のインド人が家族に(読売新聞) 6日付タイムズ・オブ・インディア紙によると、英国の連続テロ事件でグラスゴーの空港ターミナルに突入した車両を運転していたとされるインド人航空技師は、5月初めに英国に向かう際、…

チャールズ皇太子のカーボン・フットプリント

チャールズ皇太子一家は,2005年以来カーボンニュートラルを達成している(2007年1月以前の海外出張は含めていなかったらしい).オフセットには,Climate Care社のプログラムを利用している.チャールズ皇太子の年次会計が発表され,その中で実際のCO2排出…

IPCC第4次レポートのWG3の政策決定者向けサマリー

IPCC第4次レポートのWG3のサマリーが5月4日に発表された(pdf).おさらいすると,2月に出たのがWG1「自然科学的基礎」,4月に出たのがWG2「影響,適応,脆弱性」,そして今回のがWG3「気候変動の緩和」.第2次レポートはSAR,第3次レポートはTARとくると,…

国レベルでのカーボン・ニュートラル

ノルウェー首相は2050年までに温暖化ガスの排出をゼロにするというカーボン・ニュートラルを宣言したそうだ(news).とうとう国レベルでのカーボン・ニュートラルの提案が出てきた.活動,イベント,個人,組織,政府,国といった様々なレベルでのカーボン…

エタノールで「カーボン・ネガティブ」の可能性

バイオマスはその成長過程で炭素を吸収するために燃焼しても「カーボン・ニュートラル」だと言われる.でも実際は,エタノールにしても,トウモロコシやサトウキビの生産や精製や運搬などの場面で,化石燃料を使っているので,カーボン・ニュートラルではな…

フード・マイルズとフェア・マイルズ

食料品の選択を通してCO2排出量を減らすには,フードマイルズという概念(指標としてはフードマイレージ)は便利だ.食材の輸送量×輸送距離で測られるフードマイレージを小売店が食品に表示するようになれば,消費者はこの数字の小さい食材を買うことでCO2削…

ドイツでもカーボンオフセット

国家公務員や閣僚の出張によって排出されるすべてのCO2をオフセットすることが決まった(link).2007年以降.年間US$4〜$5.3 million(約5〜6億円)くらいかかると予想され,2008年度予算に組み込まれている.欧州では流行というか,当たり前のこととなったよ…

気候変動ダイレクトアクション

ダイレクトアクションは欧州の環境NGOのお家芸だけど,カーボン・オフセットに対しても実行された(news). London Rising Tide(LRT)のアクティヴィストたちは,The CarbonNeutral Company(旧名Future Forests)の会議スペースを占拠したらしい.彼らは…

ピークオイルをめぐる国際パネルが必要だ.

気候変動についてはIPCCのおかげで国際的なコンセンサスが得られるようになったし,膨大なデータを集めて最善の予測を行うという一連の作業が確立された.これに対して,ピークオイルや原油埋蔵量に関するデータはぜんぜんまとまっていないし,楽観論から悲…

AAASのAnnual Meeting

AAASの年大会がサンフランシスコで開催中.今年のテーマは「持続可能なwell-beingのための科学と技術」.Well-Beingは「幸せ」とか「生活の質」のような概念.というわけで,180分と90分の2種類あるシンポジウムの中から,もし参加してたら聞いてみたいと直…

いまの社会制度ありきで考えない.

地球温暖化を防ぐっていう文脈で,「1人1人の取り組みが大事」とか「できることからコツコツと」といった決まり文句がある.それも善意の顔をした人に限ってテレビや講演で言う.でも,これってある種の拷問だ.だって,世の中の楽なやり方に逆らえと言って…

「予測値(範囲)×それらの確からしさ」をどう伝えるか?

IPCC第4次評価報告書第1作業部会の「政策決定者向け要約(SPM)」が発表された.気候変動問題の重要性がますます増したと感じる人が多い内容だったけど,どうやってこの印象を伝えればいいのかは実は難しい.気温上昇と海面上昇の予測について検証してみる.…

気候変動対策で取り残されていくかも・・・

首相施政方針演説では,<「健全で安心できる社会」の実現>の最後の部分にちょっとだけ触れられている.具体的には「バイオ燃料」しか出てこないし,そもそも将来世代に対する倫理観や哲学は全くないし,とても事務的だ.「二十一世紀環境立国戦略」がこん…

カーボン・ニュートラルその他

英マークス・アンド・スペンサーがカーボンニュートラルを宣言 Marks & Spencer launches "Plan A"- £200m 'eco-plan' 2012年までに,1)エネルギー使用量の削減,2)再生可能エネルギーの導入,3)カーボンオフセットによってカーボン・ニュートラル企業になる…

ノルウェー政府と英国政府によるカーボン・オフセット

ノルウェーは公務員が海外に航空機を使って出張する場合に,排出権を購入してオフセットする計画を発表(1月2日BBC).このための費用は年間250万クローネ(約5000万円)で,植林などに投資される. 英国政府はブレア首相と30省庁の大臣が2007年から2009年に…

カーボン・オフセットの規格化

「カーボン・オフセット」の流行を受けて,Defraはその信頼性と透明性を保つための自発的な行動規約(voluntary code of practice)が提案された.文書はコンサルテーションにかけられており,意見募集期間が4月13日まで. http://www.defra.gov.uk/news/200…

バイオエタノールの経済性

バイオエタノール・ジャパン・関西が完成した(ニュース記事).廃木材から自動車用燃料を生産するという画期的な事業だが採算はどんな感じだろう?ということで1リットル生産費用を計算してみた.「総事業費約40億円。年度内に本格稼働し、年間4万〜5万…

地球温暖化と宗教

科学者と福音主義キリスト教リーダーが共同で,ブッシュ大統領と有力政治家たちにメッセージを送った.その中には次期大統領候補も含めれていて,民主党側が,ヒラリー・クリントン(New York州の上院議員),バラック・オバマ(Illinois州の上院議員),共…

炭素の回収貯留(CCS)

排出された二酸化炭素を回収して貯留するという技は,あまり好きになれないが,選択肢から外すこともできないだろう.英国で,carbon capture and storage (CCS) のコストが試算された.DTIから委託を受けたPoyry Energy Consultingが計算したところ,CO2の…

バイオエタノール・ブームをめぐるトレードオフの数々

気候変動対策としてのバイオエタノールの利用は,1つのリスクを下げようとすると,いろいろなところでトレードオフが出現し,リスク削減対策には冷静に全体を見渡す能力が必要であることがよく分かる事例だ.ほんとは,ダイオキシン対策だって,シックハウス…

将来予測その2

次は,World Future Societyによる予測.彼らの発行している雑誌THE FUTURISTからの抜粋を引用. 水素燃料電池は2010年までに価格競争力を持つ. サイボーグの時代が間近に(生きた細胞のDNAを使ったバイオコンピューター) 2015年までに,ニューヨーク,東…

将来予測その1

英国では,Horizon Scanning Centre(HSC)が2年くらい前に設立された.Horizon Scanは,英国DTIのOffice of Science and InnovationのForesightプログラムから出てきたプロジェクト.2005〜2055年に起こる変化とそれらの社会への影響を予測する.2つのパー…

「気候変動とメディア」公聴会

米国議会上院の環境及び公共事業委員会(U.S.Senate Committee on Environment & Public Works)で「気候変動とメディア」という公聴会が開催された.ここからRealPlayerで見れる.テキストはここ.テーマは,メディアは科学的知見を正しく伝えているか.議…

エネルギー生産基地としての砂漠

The Guardian紙の記事「どうやって鏡が世界を照らし出すか」.ドイツの2人の科学者(Dr Gerhard Knies and Dr Franz Trieb)がドイツ政府に提出した報告書によると,集光型太陽熱発電(Concentrating Solar Power:CSP)で世界中の暑い地域の砂漠の0.5%をカ…

カーボン・フットプリント

将来は店で売っている製品に必ず「カーボン・フットプリント」が記載されるようになるだろう.カーボン・フットプリントとは,その製品の原料採取から廃棄されるまで,つまり「ゆりかごから墓場まで」の炭素排出量のことだ.英国で最近行われたアンケート調…

次の段階に進む英国の温暖化対策

日本では道徳観に訴えるような生ぬるーいことをやっている間に,英国では温暖化対策2.0とも呼ぶべき動きを見せている.その1つがこれ.英国下院気候変動グループ議長のChallen氏は,クルマの広告の四分の一のスペースは環境影響データを載せるべきだと発言し…