将来世代の安全と所得は低下するという予想

Gallup社の"Voice of the People"プロジェクト

Davos会議に合わせて出されたアンケート。日本でも一部メディアで「「次世代の繁栄」3割に減少 60カ国調査」なんて報道された(すでに記事は見当たらず)。元は、GALLUP社の"Voice of the People"プロジェクトのアンケート調査。
国によって調査方法は、対面だったり電話だったり。日本はサンプル数1200人の"Self-administered"(インターネットモニターへのアンケートという意味か?)で、日本リサーチセンターが受託した。ただし、ここに出ている結果は「2008年はどのような年になるか」で、Gallup社の「次世代の生活どうなっているか」と切り口が異なる。サンプル数は同じなので両方聞いて結果を切り分けているということか?
興味深いのは、目先の2008年よりも、Gallup VOPの次世代の方で、日本人に特に未来に対する悲観的な見方が広がっていることが分かる。
「次世代は今よりも安全な世界に住むか」という問いに対して、世界全体では、ずっと安全(A lot safer)8%、少し安全(A little safer)17%、変わらない(Same)21%、少し危険(A little less safe )30%、ずっと危険(A lot less safe)19%なのに対して、日本人の回答はかなり悲観的。ずっと安全はわずか1%、少し安全もわずか4%、変わらないでも8%、そして少し危険が41%、ずっと危険が35%。
「次世代は今よりも経済的に繁栄しているか」という問いに対しては、世界全体では、大きく繁栄する(A lot more economic prosperity)10%、少し繁栄する(A little more economic prosperity)23%、変わらない(Same)22%、少し低下する(A little less economic prosperity)24%、かなり低下する(A lot less economic prosperity)12%なのに対して、日本人の回答はこれまた悲観的。大きく繁栄するは2%、少し繁栄するは10%、変わらないは15%、少し低下するは9%、かなり低下するは9%。実は「分からない」と回答した人が25%で一番多い。要するに、不確実性に満ちているということだろう。
世界全体のデータは2003年から5年分があるが、2005年に少し楽観的になった以外は平均値で見るとほとんど変わっていない。日本についての時系列データは得られなかったが、悲観的な方にシフトしているかもしれない。
次の世代が前の世代よりも安全面でも所得面でもマイナスになるという予想は、人々の様々な行動にも深い影響を与えるのではないかと思う。子供を産むかどうか、何人産むか、どんな教育を受けさせるか、遺産をどれくらい残すか、等々。テクニカル話としては、いつも経済学者が世代間割引率を出すときに当然のように置く、プラスの継続する経済成長率とそれに伴う所得の限界効用低下という仮定がなりたたなくなることを意味する。もしかしてたまに聞く「マイナスの割引率」ってこういうところから出てくる話なのか?

アジア・バロメータ

欧州で1973年以来様々な世論調査がやられている「ユーロバロメーター」に対抗して、「アジア・バロメーター」が行われている。過去には2003年から実施され、『アジア・バロメーター 都市部の価値観と生活スタイル―アジア世論調査(2003)の分析と資料』と『アジア・バロメーター躍動するアジアの価値観―アジア世論調査(2004)の分析と資料』が出版されている。最新の調査は2008年1月、委託先の日本リサーチセンターが対面調査で実施したようだ。平成19年度文部科学省、科学研究費補助金でやっているそうだ。