英国のWhich?が化粧品におけるナノ粒子についての報告書を発表

Which? "Small Wonder: Nanotechnology in Cosmetics"(pdf)
英国系のメディアで、化粧品のナノ粒子の話題が盛り上がっている。特に、Daily Mail「ナノ粒子を使ったビューティクリームはあなたの体に毒かもしれない」はセンセーショナルに取り上げている。情報源は、英国の消費者団体であるWhich?による報告書"Small Wonder: Nanotechnology in Cosmetics"(2008年11月5日発表)だ(プレスリリース)。誤解してはならないのは、Which?は化粧品へのナノ粒子の利用に反対しているわけではない。彼らが懸念していることは、1)必要な安全性試験が実施されていないのでナノ粒子の安全性には不確実性があることと、2)消費者に対してナノ粒子が使用されていることが知らされていないことだ。
Which?は、67の化粧品会社に対して、ナノテクを利用しているか、そのベネフィットは何か、製品の安全性をどのように保証しているか、といった点について、書面で尋ねた。回答は17社からあって、そのうちの8社が情報提供してくれた。
情報提供すると回答した8社は、L'Oreal, Unilever, Beiersdorf(Nivea), Avon, Boots, The Body Shop, Korres, The Green People。すべての会社が日焼け止めにナノスケールの二酸化チタン(場合によってはさらにナノスケールの酸化亜鉛)を使用しており、L'OrealとKorresは、ナノエマルジョンも使っている。Unilever, Korres, The Green Peopleは、どの製品にナノ粒子が使用されているか明らかにしたが、ナノ粒子の使用をウェブサイトでも明治しているのはKorresの"Red Vine"(髪を太陽光から保護するもの)のみだった(※Korres社の製品ページで確認"carried by special nanoparticles"と表記)。そのほかの会社は、どの製品にナノ粒子が使用されているか特定してくれなかった。
報告書の中での注目は8社からの回答表だ。特に安全性に関する各社の見解がおもしろい。何点かメモ。

  • Avonは、内部の科学者が製品化前に、皮膚への吸収性を含めて個別・完全に評価している。
  • The Body Shopは、すべての製品は独立の外部安全評価者によって慎重な評価を受けている。
  • The Green Peopeは、彼らが使用している「ケイ酸でコートしたルチル型の二酸化チタン」は安全だと考えている。
  • Korresは、いくつかの論文を参考に「20nm」を「広く受け入れられた安全バリア」とみなし、その3〜5倍の60〜100nmサイズのものしか使用していない。
  • L'Orealは、予防的な理由から、ナノチューブフラーレンを含む製品は売っていないし、エアロゾル形態のナノ材料は使用していない。
  • L'Orealは、現実世界に近い条件でのナノ材料の試験を可能にする生態毒性の実験モデルを開発した。

また、3人の専門家(Richard Jones氏、Vickie Stone氏、Ken Donaldson氏)がコメントしている。

Andrew Maynard氏も早速11月6日のブログ記事「ナノテクノロジーと化粧品」でこの報告書を絶賛している。短いのでとにかく「読め」と。そして最後の10項目のアクションプランを取り上げている。
ちなみに、日本でも(おそらく欧州よりもさらに)化粧品におけるナノ材料の利用は多い。インベントリには135ブランド、388製品が挙がっている。最近更新できてないのでアップデートするとさらに増えているだろう。