Andrew Maynard氏のブログ追っかけ(続く)

5月31日は新規ハイブリッドナノ材料の話

Maynard氏がユニークなところは、ナノのリスクだけでなく、ベネフィットもバランスよく語ること。両方の最先端を話すことができる人材はなかなかいない。今回取り上げられたのは、Nano Letter誌のオンライン版に掲載された論文。でもタイトルについては"inspirational"じゃないという理由でダメ出し。著者らは、カーボンナノチューブの先を金属のナノワイヤで蓋をしたようなハブリッドなもの("nano-wands")を作った。そうすると、片方が親水性、もう片方が疎水性を持ち、水中で均一な分散をする。ジクロロメタンを加えると、ジクロロメタンのまわりに金属部分が外側を向いて集まり、さらに超音波で混ぜると1つのジクロロメタンを中心とした塊になる(Figure 2)。
もちろんリスクの側面についても触れないわけにはいかない。ナノリスク界(?)ではちょうどPoland et al.レターの件で盛り上がっている最中だ。この論文の"nano-wands"はまさにPoland et al.で最も懸念されたMWCNTのサイズに近い。Maynard氏のまとめはこうだ。

ここで重要な点は、この特定の材料が有害な挙動を示すかもしれないことではなく、新規な挙動は予期せぬ有害性をもたらしうる可能性が常にある−初期に正しい問いかけがなされないならば−ということだ。そして、これらの問いがどのようなもので、どのようにして答えるのが最善かに関して新しい考え方が絶対に必要だ。

ちなみに、Poland et al.レターはNature Nanotechnology誌の7月号に正式に掲載された。5月に騒がれたときはオンラインで公表されたタイミングだった。Kane and Hurtによる"Nanotoxicology: The asbestos analogy revisited"という2ページの解説付き。

6月6日はNNI改正法が下院を通過した

2003年にブッシュ大統領が署名して成立した"21st Century Nanotechnology Research and Development Act"が再授権の年を迎えた。そこで、まずは下院で"National Nanotechnology Initiative Amendments Act of 2008"が407対6の圧倒的多数で可決された。Maynard氏も全面的に賛成のようだ(ちなみにEnvironmental Defense Fundも手放しで称賛)。この法律の特徴を4点挙げている。

  1. ナノテクノロジーの社会的側面に関するコーディネーターの指名→大統領府の中の"Office of Sceince and Technology Policy"に籍を置き、ナノテクの環境健康安全(EHS)研究計画の責任者となる。ただ、Maynars氏はこの仕事が相当きついものになると予想している。なぜなら、省庁はホワイトハウスからの干渉を嫌うからだ(※規制をめぐる省庁vs.OMBの長年の戦いからも想像がつく)。
  2. ナノテクに関するリスク研究計画の作成と実施→上記のコーディネーターが研究計画を作成し、定期的に更新し、実行することを求めている。重要な事項は、短期および長期の研究目標、マイルストーン、実