英国の「自発的な報告スキーム」提案

英国政府が, 工業ナノ材料に関して「自発的な報告スキーム(Voluntary Reporting Scheme)」を提案した(コンサルテーション文書).
対象は人工的なナノ材料を,開放された(フリーな)状態で生産・使用・輸入する事業者で,提出する情報は既存のもののみで,新たな情報の生産は要求されない.報告項目は以下のような感じ(詳細はANNEX Aに載っている).

  • 報告者の名前と連絡先
  • ナノスケール材料の名称
  • ナノスケール材料に含まれている化学物質のCAS番号(材料の名称,物質の構造)
  • ナノスケール材料に関する情報(生産者あるいは輸入元,製造プロセス,想定された利用方法(自社内・下流・消費),潜在的な曝露経路,それぞれの曝露可能性,利用のベネフィット,凝集や拡散の特性についての情報,大きさと形,サイズ,表面積)
  • ナノスケール材料の物理化学的特性(水溶解性と水中での安定性,燃焼・発火・爆発の可能性,オクタノール水分配係数)
  • ナノスケール材料についての毒性情報(急性毒性,反復毒性,動物を使わないテストから得られた毒性情報(in vitro、QSARs))
  • ナノスケール材料についての生態毒性情報(生物への影響,分解)
  • 環境中運命・動態・相互作用に関する利用可能な情報
  • 測定手法
  • ナノスケール材料の排出を抑えるために現在実践されているリスク管理の方法

このスキームはとりあえず2年やってみた時点で評価を行って,さらに後継続するかどうかを決める.コンサルテーションの期間は6月23日まで.さっそく夏にはスキームを開始したい意向のようだ.

さらに,ウッドロー・ウィルソン国際学術センターの報告書の影響を受けたかのような次のような提案もある.

政府はまた,環境へのリスクに対処するための既存の規制フレームワークのレビューを行い,人工的に生産されたナノスケール材料がこのフレームワークにどのくらい適合しているか調査を行う.このレビューとは別に,政府は、横断的な化学物質法制と部門ごとの法律の
評価も行う.このレビューについてはこのコンサルテーション文書では議論しない.


しかも,これらの作業は部分的にはもう進められていて,環境規制については中間報告のようなものがすでに出ており,食品と労働安全についても今年中に報告書が出るそうだ.いつの間にそんなことを!