ワークショップ「ナノと環境」(ブリュッセル)

Nano and the Environment
3月30〜31日にブリュッセルで開催.ナノテクと環境について,プラス面(モニタリングのためのセンサー,環境浄化,資源節約に役に立つ)を中心に,マイナス面(ヒト健康や生態系へのリスク)にも目を配るというワークショップ.ウェブサイトからは報告スライドがPDFファイルで見れる.
いちばん興味深かったスライドは,ドイツのブッパタール研究所の人の「ナノテクノロジー:資源効率性を改善する技術なのか?(Nanotechnologies- Technologies to Improve Resource Efficiency?).ブッパタール研究所(正式には「気候,環境,エネルギーのための」が付く)は,持続可能性の問題を専門としている研究所で,ナノテクを持続可能性や資源効率性に貢献できるかという視点から検討している.こういう視点は新鮮だった.問題の枠組みを次のように整理している.

プラス面(機会)

  • 資源効率性を高める可能性
  • 有害な化学物質を代替
  • 環境にやさしい技術(新規,改良)
  • 汚染の浄化
  • クリーンなエネルギー
  • 燃料の効率性の向上
  • 環境モニタリング

マイナス面(リスク)

  • 環境リュックサック*1を増加
  • リバウンド効果*2
  • ヒトや生態系への毒性影響
  • リサイクルや分解の問題
  • 未知(新規)の特性を持った物質の拡散

また,Vicki Colvinのスライドでは,「人工ナノ粒子は危険か?」という問いは古くて,これからは「どうやったら安全なナノ粒子を作れるか?」を問うべきだというようなことが書かれていた.普通の化学物質のリスクを減らすには曝露量を減らすしかないが,ナノ材料は曝露量だけでなく毒性も操作可能である(つまり減らせる)点がおもしろい.

*1:ライフサイクルで見た環境負荷の大きさを

*2:単体での環境負荷は減っても生産量や使用量がそれを上回って増えるとかえって負荷が増えてしまう