飲酒運転厳罰化でひき逃げ急増

2006年4月17日のNHK番組「クローズアップ現代」で、2001年の刑法改正による危険運転罪の新設の結果、飲酒運転で事故を起こした運転者が、刑罰を恐れて逃亡するひき逃げ事件が急増しているとのテーマが報道された。この因果関係は、交通刑務所に服役している加害者からの聞き取り調査からも裏付けられた。本来、事故の抑止を目的として実施された刑罰強化が、逆効果を招いたことになる。

最近交通事故死者が急減しているので,危険運転罪の効果が現れてきたのかと素直に考えていたが,ものごとは単純でないようだ.世の中はリスクトレードオフに満ちていて,あるリスクを減らしたときに,思いもかけないリスクが増えてしまうことがある.自然界のメカニズムも,人の行動も,われわれがいま理解していると思ってるよりもずっと複雑だ.

以前,米国でシートベルトの義務付けがなされたときに,シートベルト着用はかえって荒っぽい運転を誘発し(つまり,自分の安全性が高まったから),他者に対するリスクを高めるという議論があった.