米国OMBの提案する新しいリスク評価ガイドライン

米国行政管理予算局(U.S. Office of Management and Budget:OMB)は,連邦機関が実施するリスク評価の質と客観性を高めるための,リスク評価の新しいテクニカル・ガイダンスを提案した(pdf).パブリックコメント期間は6月15日まで.
OMBは,連邦機関が実施した規制影響分析(とそのもとになったリスク評価)をレビューする機関で,不備があったら突き返す権限を持っている.ここが出してきたガイダンス文書は,連邦機関にとっては,事実上,強制力を持つものであり,業界標準となる可能性が高い.そのため,強い関心が寄せられ,5月23-24日にはワシントンDCのジョージ・ワシントン大学公開討論会が開かれる(link).
この提案の特徴は,実施されるリスク評価を,「影響力の強い(influential)」リスク評価と「影響力の強くない(non-influential)リスク評価に分けて,前者についてより高度な分析を求めた点にある.「影響力の強い」とは,重要な公共政策や民間部門の意思決定に大きな影響を与える場合を指す.例えば,工業ナノ材料のリスク評価なんてのもこれにあたるだろう.
特に,リスクの推計の不確実性を,中央値(期待値)と分布(上限と下限)で表すことが求められている.

リスクの推計値に不確実性がある場合,リスクの点推定値を提示することは誤解を招きやすく,正確さについての誤った印象を与える.ありそうな範囲のリスク推定値を,中央推定値とともに示すことは,リスクのより客観的な大きさを伝える.影響力の強いリスク評価は,上限値と下限値とともに中央値を強調することによって不確実性を表現する.リスクの上限値や下限値のみを示すことは推奨されない.

スクリーニング評価のよう単純な安全側の仮定のみの評価は許されない.このあたりはかなりの変革になるので議論があるだろうなと予想される.