週刊ポストの<衝撃データを一挙公開>の衝撃(笑)

コンビニでふと目に付いたので立ち読みしてみた.週刊ポスト11/17号の表紙に掲げられたタイトルは「『受動喫煙は子供の発がん率を低下させる!』 成人男女も「影響なし」――WHOが封印した7年間の研究成果」.内容もツッコミどころ満載だったのだけど,一番笑えるのは…

封印なんてしてない(笑)

ちゃんと1998年に著名な医学誌であるJournal of National Cancer Instituteに載っている.1988〜1994年までの追跡データを解析して1998年に掲載されているのだから,大量のデータの収集・整理・解析,そして査読期間を考えればむしろ素早く公表した部類に入るだろう.「当初の想定と逆の結果が出てしまったから封印した」なんていう陰謀説はまるっきりの妄想だ.しかも,(週刊ポストは買わなかったからここに出てくる大学教授の名前は忘れてしまったけど)自分が知らなかったことをもって「封印していた」なんていう発想はかなり恥ずかしい! ましてや専門家として顔写真出してコメントしているんだから.ちゃんと論文の日付くらい確認しようね(笑).

Boffetta, P. et al. (1998). Multicenter case-control study of exposure to environmental tobacco smoke and lung cancer in Europe. Journal of The National Cancer Institute 90: 1440-1450.

誰でも全文pdfで読めるので確認は簡単だ.もしかしてこの大学教授は読者は難しい研究論文なんて読まないだろうという見込みでいい加減なことを言ったのだろうか? 論文の著者らは既存研究などと照らし合わせた上で,「子供の頃の受動喫煙が肺がんを防ぐ働きをすると結論付けることはできない」と言っている.週刊ポストの見出しの「受動喫煙は子供の発がん率を低下させる」もそもそも「子供の頃の受動喫煙は(成人になってからの)発がん率を低下させる」の間違い.こんな低レベルの記事がトップ記事である週刊ポストは買わない方が良いね.