行動経済学が消費者金融の興隆をどう説明しているか気になる.

消費者金融といえば,ひたすらイメージだけを流すテレビCMの洪水と無人ATM店舗がいくつかまとまって道路沿いに結集している姿を並べて見るととても不気味だ.あれだけ店舗ができるということは利用者も存在しているのだろう.本書の範囲を超える話だけど,経済学者は消費者金融が儲かっているという事態をどうとらえるのだろうか?20%を超える金利で借金するという行為の裏には合理的な思考が働いているのだろうか?利用者は特異な時間選好を持っているとしか思えないのだが,行動経済学者は研究対象にしているのだろうか?本書の著者は消費者金融の儲かる仕組みを「悪魔のビジネスモデル」と呼ぶ.消費者金融側は,貸して欲しい人がいるから貸すのだ(=世のため人のためだ)と主張する.消費者金融業界では借り手のことを「資金需要者」と呼ぶそうだ.著者は消費者金融との対比で,コミュニティ金融を取り上げ,信用金庫界のカリスマ小原氏の残した「貸すも親切,貸さぬも親切」という名言を象徴的に引用している.著者の批判のポイントは,消費者金融は特に弱者を狙って必要額以上に金を貸し付けているという点にある.でも,この批判は消費者金融だけに向けられるべきものだろうか?お金はたしかに最初の一歩だけど,借りた人はそれを何かの購入に使っているわけで,テレビCMやあらゆるメディアはあの手この手を使って必要以上のモノをぼくらに購入させようと日々画策している.世の中は要らないものであふれている.そして経済っていうのはそうやって無理やり生み出された消費によってなんとか回っているのだ.