いまの社会制度ありきで考えない.

地球温暖化を防ぐっていう文脈で,「1人1人の取り組みが大事」とか「できることからコツコツと」といった決まり文句がある.それも善意の顔をした人に限ってテレビや講演で言う.でも,これってある種の拷問だ.だって,世の中の楽なやり方に逆らえと言っているのだから.例えば,クルマでしか行けないような郊外に便利なショッピングモールがどんどんできるなかで,1時間に1本しかない不便なバスや鉄道のローカル線を乗り継いで行けと言っていることになる.「いまの社会のあり方で楽なやり方に従うと温暖化が進む」のだから,「いまの社会のあり方で楽なやり方に従うと温暖化が進まない」ように「いまの社会のあり方」を変えるのが合理的なやり方だ.苦行に耐えられる人は少ないし,多大なストレスを生んでは意味がない.誰でも楽をしたいのだ.
そして,もう1つ大きな問題がある.がんばる正直者だけが損をするやり方だからだ.同じ例で言うと,がんばってローカル線を乗り継いで郊外のショッピングモールに行った「正直者」(帰りは重い荷物を背負って帰らないといけない)にとって何の報酬もないのだ.これって公平だろうか?
社会システムや(税制も含めた)制度を変えることをしないで,「1人1人が・・・」と呪文のように唱えるのはもうやめにしよう.こんなことを言う人は決して善人ではない.誰かに負担してもらって自分は楽をしようと企む偽善者か,何も考えてない人かどちらかだ.それか,苦行が好きな人だ(別にいいけど,他人にまで押し付けるのはやめてほしい).
そもそもの間違いは,根拠のない性善説にあるのかもしれない.あるいは,環境保護運動の担い手が「良い人たち」ばかりで,世の中全員自分たちのような人ばかりだと勘違いしているのかもしれない.こういう現実離れした前提は早く捨てないと.