最近のニュースに取り上げられたナノ毒性論文

単層CNTsの「長さ」と毒性の関係

National Institute of Standards and Technology (NIST) の研究.200nm未満の長さのDNAに包まれた単層Carbon nanotubes (CNTs)がヒトの肺繊維芽細胞内に優先的に取り込まれるのに対して,200nmよりも大きいものは細胞から取り除かれることが示された.
Becker, M. L. et al. (2007). Length-dependent uptake of DNA-wrapped single-walled carbon nanotubes. Advanced Materials 19(7): NA-NA.

酸化鉄ナノ粒子の細胞毒性

酸化鉄ナノ粒子は磁気で遠隔操作しやすいために医療での応用が見込まれている.まず,酸化鉄ナノ粒子をジメルカプトコハク酸(dimercaptosuccinic acid:DMSA)でコーティング.理由は,水溶液中で凝集する(サイズが大きくなる)のを防ぎ,神経細胞(PC12)に取り込んでもらうため.成長因子を与えられたPC12では軸策が成長するが,酸化鉄ナノ粒子が取り込まれた場合,軸策の成長への悪影響が用量反応的に現れた.
Pisanic II, T. R., Blackwell, J. D., Shubayev, V. I., Fiñones, R. R. and Jin, S. (2007). Nanotoxicity of iron oxide nanoparticle internalization in growing neurons. Biomaterials 28(16): 2572-2581.

フラーレンの土壌微生物影響

フラーレン(C60)が土壌微生物の動きに影響を与えないことを確認.dryとwetな状態で,濃度は1ppmと1,000ppmで,6ヶ月間観察.
Tong, Z. et al. (2007). Impact of Fullerene (C60) on a soil microbial community. Environmental Science & Technology 41(8): 2985 -2991.

CNTsの(触媒金属の)水生生物影響

加工していないCNTsのゼブラフィッシュの胚への影響を観察.単層CNTsは,120〜360mg/Lで,孵化の遅れが見られた.二層CNTsは120mg/Lでは影響は見られなかったが,240mg/Lでは孵化の遅れが見られた.著者らは,CNTs合成時の触媒に含まれていたニッケルとコバルトが原因物質ではないかと考えている.理由としては,疎水性の粒子は大きなクラスターを形成するので,胚の絨毛膜(のナノスケールの穴)を通過できないこと.
Cheng, J., Flahaut, E. and Cheng, S. H. (2007).Effect of carbon nanotubes on developing zebrafish(Danio Rerio) Embryos. Environmental Toxicology and Chemistry 26(4): 708–716.