ハピネス研究によって生活の要素ごとに値札を付ける

アンケートを用いることによって,環境,健康,安全といった市場で取引されていない財に値段を付けることが可能になった.支払意思額(WTP)を尋ねたり(CVM),属性の束から選択させたり(コンジョイント分析)する方法が主流だ.最近,これらに加えて,生活満足度や幸福度を被説明変数にして,「所得」を含めた説明変数で回帰分析することによって,各説明変数と所得との限界代替率を求めることによって,様々な変数の金銭価値化を行う方法が流行っている.生活満足度や幸福度はとても簡単な指標だ.あなたは幸福ですか?(生活に満足していますか?)と尋ねて,3段階から10段階くらいで回答してもらう.こうした結果は例えばこのような記事でも紹介されいてる.

「友人がおらず、近所付き合いのない人は、友人や近所付き合いのある人と同等の幸福感を得るために、年間32万ドル(約4000万円)も余計に稼がなくてはならないという」という結果が紹介されている.同じ幸福度を維持するために,説明変数の1つ,「近所付き合い」を「あり」から「なし」に変えても,同等の幸福度を保つためには,所得を「年間32万ドル」増加させる必要があるという計算になったということだ.
他にも,ロンドン大学のNattavudh Powdthavee氏の研究論文がもうすぐJournal of Socio-Economics誌に載る.タイトルはこんな感じ.

  • 友人,親戚,隣人に値札を付ける:社会的関係を金銭価値化するために生活満足度のアンケート調査を利用する(Putting a price tag on friends, relatives, and neighbours: Using surveys of life satisfaction to value social relationships)(ニュース記事).

1万人の英国人にアンケート調査を実施.被説明変数である生活満足スケールは,1(まったく悲惨)から7(幸福感にあふれた)までの7段階で尋ねられた.例えば,健康状態は,「素晴らしい」から「悪い」への変化は48万ドルを失うことに相当,友人や親戚との顔合わせ回数が,月に1, 2回からほぼ毎日への変化は18万ドルを得るに等しい.配偶者を失うことは42万ドルの損失,結婚することは10万ドルの獲得に等しい.