新刊"Nanoethics: The Ethical and Social Implications of Nanotechnology"

８月発売予定の新刊．日本語では『ナノ倫理学：ナノテクノロジーの倫理的および社会的影響』．この分野の代表的な人たちの論稿が並び，これは邦訳する価値がありそうだ．

• 序文には米国ナノテク界の大物，Mihail C. Roco)氏.
• 第1章「イントロ：ナノテク議論」には，Nanoehics Groupを率いるPatrick Lin氏とFritz Allhoff氏．そして，Bill Joy氏の有名論文"Why the future doesn't need us"（何故未来は我々を必要としないのか）」が収録されている．また，最近翻訳された『ポストヒューマン誕生』などの著者であるRay Kurzweil氏.
• 第2章「背景：ナノテクノロジーを位置づける」では，コンピューター倫理学のJohn Weckert氏（今年"Computer Ethics"を出版），Foresight InstituteのVice PresidentであるChristine Peterson氏ら（google videoでインタビューが見れる）．"Soft Machines"の著者であり同名ブログのRichard A. L. Jones氏，米国の科学政策界の大物Neal Lane氏ら，Virginia大学の科学・技術・社会という学部で教えているRosalyn Berne氏．"Nanotalk"の著者である．
• 第3章「問題群：次の革命に備える」でも最初はJohn Weckert氏，Charles Tahan氏による「革命」と「進化」を掛けた"The Nanotechnology (R)evolution"，Oxford大学の人類未来研究所（Future of Humanity Institute）の所長であるNick Bostrum氏， Ecole PolytechniqueのJean-Pierre Dupuy氏による「慎重なアプローチ」論文（pdf）．そして必ず出てくる予防原則の話をJohn Weckert氏と哲学者のJames Moor氏．
• 第4章「問題群：健康と環境」は最初はJim Moor氏．リスク全般の話を，ノルウェー人のAnne Ingeborg Myhr氏とRoy Dalmo氏．ナノ医療の話をRobert A. Freitas氏．彼は，ナノ医療（Nanomedicine）という教科書を書いており，1999年にVolume I（基本的な可能性），2003年にVolume IIA（生体適合性）が出版されている．科学と宗教の問題の大家であるTed Peters氏は，Science, Thology, and Ethics（科学，神学，そして倫理学）という著書もある．次に，Guston氏，Parsi氏，Tosi氏はArizona州立大学のCenter for Nanotechnology in Societyのメンバー．そのセンター長であるDavid Guston氏は政治科学の専門家で，"Real-time technology assessment"という概念を提唱している(pdf)．
• 第5章「問題群：民主主義と政策」はJim Moor氏がイントロ．Institute for Ethics and Emerging TechnologiesのExecutive DirectorをやっているJames Hughes氏が市民社会と新規技術の関係について論考(論文はここで読めるpdf）．理論政治学者のColin Farrelly氏は，参加型民主主義とナノテクの関係を議論．次は2年前に，Nano-Hype: The Truth behind the Nanotechnologyという本を出した．Hypeは誇大広告という意味．David M. Berube氏．彼は同名のブログもある．James Wilsdon氏とJack Stilgoe氏は英国のシンクタンクDemosのメンバーで，2005年には'The Public Value of Science'（科学の公共的価値）という本も出している．Demosは参加系のプロジェクトが得意．
• 第6章「問題群：さらに広い社会的影響」で，イントロはJohn Weckert氏．Jeroen van den Hoven氏が，RFID（Radio Frequency IDentificationの略）を例に，プライバシーの問題を扱う．Daniel Moore氏は軍事利用について考察．The Nanoethics Groupに属しているそうだ．Patricia Schank氏らは教育改革への影響について議論．Joachim Schummer氏は途上国への影響を検討している（ここで読めるpdf）．彼は，'Nanotechnology Challenges: Implications for Philosophy, Ethics And Society'という本を2006年に編集している．
• 第7章「問題群：遠い未来？」ではイントロはFritz Allhoff氏．CRNのMike Treder氏とChris Phoenix氏が，指数的製造について．彼らは以前，Safe Exponential Manufacturingという論文を書いている（pdf）．Tihamer Toth-Fejel氏らによるナノ倫理の話．J. Storrs Hall氏による人工知能の倫理学．彼は最近和訳が出た『ナノフューチャー―21世紀の産業革命』の著者（google videoで彼の講演が見れる）．最後は，Sebastian Sethe氏によるナノテクを使った延命に関する論稿（google videoで彼の講演が見れる）