ナノ毒性学会議2007

パリで6月26〜28日まで,"Nano Toxicity Conference 2007"が開催された.以下,プログラムを見ながら適当なメモ作成.

Session 1:環境影響

各種ナノ材料(金属,酸化物,CNT)の土壌と水圏での挙動やミミズと魚の体内動態の調査.フランスのAfssetの報告書に基づいた環境健康影響の報告(Afssetとは「フランス環境労働衛生安全局」).全欧州でのナノ材料の健康環境影響研究の協力と協調・・・・最近20カ国の科学者が集まったマルチディシプリナリーなネットワークができたらしい.目的は,a)製品のライフサイクルを理解,b)排出から曝露,毒性までの反応の流れを理解.廃棄された工業ナノ粒子の水圏での運命について,いろんなパラメータの役割.

Session 2:社会的影響,リスクコミュニケーション

Berube氏による「直感的ナノ毒性学」(彼のブログにこの学会へ参加したことが書かれている).毒性学研究と平行して行われるべき社会科学研究とは何か?毒性学のデータが増えてくるにつれて,一般人は専門家と違った形で理解しようとする.英国HSLによるNanochallenge Projectの紹介.これは2006〜2009年までのプロジェクトで3部からなる(曝露と制御,毒性スクリーニングとモデリング,火災と爆発特性).欧州委員会によるNanoBio-RAISEプロジェクトの紹介.RAISEは,Responsible Action on Issues in Society and Ethics(社会と倫理における問題に対する責任ある行動)の略.最後は,EMPAの人による,ライフサイクルの観点からみたリスク管理戦略.

Session 3:確立された細胞アッセイ

人工ナノ粒子の化学的物理的特性から毒性まで.炭化タングステン,白金,CNT.各種ナノ粒子によるマクロファージの損傷と活性化.金ナノ粒子で,様々なサイズ,オプソニン化の有無による違い.ドイツのINOSプロジェクト;炭化タングステンについて,ヒトやラットの細胞系でのin vitro試験.

Session 4:上皮組織のためのモデル

ヒト肺細胞A549株を使って,酸化物ナノ粒子とCNTのin vitro毒性を調査.しっかりキャラクタライズされたCNTの束とCNT凝集体が,神経系の一次細胞に与える影響を調査.ナノ粒子の体内からの除去を担うと考えられる腎臓細胞に対する様々な組成・サイズ・電荷のナノ粒子の潜在的毒性影響をin vitroの培養細胞を使って評価.ナノ粒子の物理化学的特性ごとの,気道上皮細胞への影響の大きさとメカニズムと酸化ストレスを研究.ヒトの肺胞上皮細胞へのMWCNTの毒性影響(細胞の生存能力の減少)における凝集体形成の役割.

Session 5:方法論と試験

工業ナノ粒子の毒性のin vitro試験方法.SWCNTの肺毒性を評価するためのクローン形成法の適用.PDS® Biosensorを使った金属とナノ粒子の哺乳類の細胞への毒性の速やかな検出.好中球の食作用の化学発光分析に基づくナノ粒子毒性評価のための新しいバイオアッセイ法.動物実験反対NPOであるBUAVの人による,ナノ材料の安全性試験(皮膚と臓器の毒性)のための動物を使わない方法.EUの第6次枠組み計画(6FP)のプロジェクトであるDIPNA潜在的な毒性と生態毒性を検証するためのナノ粒子解析のための統合プラットフォームの開発)の紹介.

Session 6:生態毒性

酸化金属ナノ粒子(様々な結晶性形状の二酸化チタン,酸化アルミニウム)とMWCNT(不純物の鉄の入ってるものと入っていないもの)のグラム陰性の土壌中細菌への影響.CNTの両生類への生態影響.多細胞生物モデルを用いたナノ材料の毒性評価(バルク物質に関連する毒性,ナノ材料のサイズと形状,ナノ材料の表面の特性).ナノ材料のトキシコゲノミクス(MWCNTsと銀ナノへの曝露による遺伝子発現の変化を解析)のためのモデル生物としてゼブラフィッシュを利用.