DVD「不都合な真実」の中の名言と誤訳

不都合な真実」を見た.少し違和感があったのが,ゴア氏は気候変動の問題を,我々vs.地球という文脈で語るけれど,ぼくは我々vs.将来世代と捉えたいと考えているというギャップ.一番感銘を受けたのはゴア氏のスライドショーの準備シーン.聞き手の理解を妨げているものが何か必死で考え,ひとつずつ取り除いていく作業.プレゼンはさすがにうまい.
ただ,最後の解決策を訴えかける場面で,非常にがっかりな訳があったのでメモ.
1つ目は,"We have everything we need, save perhaps political will".これが「私たちに必要なのは あと1つだけ 政治家の意志です」と訳されていた."political will"は「政治的意志」であり,世の中の仕組みを変えていこうとする行動のことだ.当然,投票行動も含む.「政治家の」にしちゃうと他人事になってしまう!
もう1つは,"In America, political will is a renewable resource."というところが「政治こそ"再生可能"なのです」と訳されていたこと.これにはほんとにがっかりだ.誤訳と言った方がいいだろう.適切な訳は「政治的意志こそ"再生可能資源"なのです」だ.これは名言だと思う.ゴア氏が送り続けるポジティブなメッセージの中心的メッセージだ.我々の意志の力は,風力や太陽光がそうであるように,人類が無尽蔵に持つ資源なのだ.それも,太陽光や風力のように与えられるのではなく,自らが持っているという点でさらに重要だ.元の訳では,政治が再生する(昔に戻る?)みたいな感じになってしまい全く意味不明だ.