NIOSHがナノテク労働者曝露についての暫定ガイダンスを発表

NIOSH (National Institute for Occupational Safety and Health)は12月13日、ナノ材料の製造や産業利用において工業ナノ粒子に曝露する可能性がある労働者向けの医学的なスクリーニングや登録制度に関する暫定的なガイダンスを発表した(プレスリリース)。文書はpdfで39ページ(pdf)。2008年2月15日までパブリックコメントを募集する。
ちなみに、NIOSHは、DHHS(Department of Health and Human Services)の下にあるCDC(Centers for Disease Control and Prevention)に属する組織。ついでに言うと、OSHAはDOLの下の組織。OSHAとNIOSHは似ているけど、労働衛生安全問題に関して、執行機関と研究機関という関係にあり、最上部機関はそれぞれDOLとDHHSだ(日本の以前の労働省と厚生省に相当)。
今回のガイダンス文書は、OMB(Office of Management and Budget)の指定する"Significant Guidance document"に相当するため、ピアレビューなどの一定の手続きを経る必要がある。また、パブリックミーティングが1月30日に開催される。
文書では、現在まで得られている証拠からは工業ナノ粒子への職業曝露によって特定の医学的スクリーニングが必要とされるほどのリスクの証拠は見つかっていないとしつつも、当面、工業ナノ粒子に曝露される可能性のある労働現場に対して次のような対応が勧告された。

  • 労働者のナノ粒子への曝露を抑制するために用心深い(prudent)対策をとる。

具体的な内容は2006年に出た草稿"Approaches to Safe Nanotechnology: An Information Exchange with NIOSH"に述べられている。

  • 曝露抑制策を実施するための基礎としてハザード調査(hazard surveillance)を行う。

つまり、どの作業やプロセスで工業用ナノ粒子への曝露が起こっているかを把握すること。

  • 対策が効果的であるかどうか評価し、新規あるいは未把握の問題や健康影響を特定するのに役立つような確立された医学的調査アプローチを検討する。

すでに多くの医学的調査方法が存在しているので、工業ナノ粒子曝露に適したものを探す必要があるが勧告されるとともに、試験方法によっては放射線への曝露や偽陽性による不安といったマイナスの影響もあることも指摘されている。また、曝露登録(exposure registries)の是非についてのコメントも求めている。
Appendix Dでは、具体的な工業ナノ材料として、SWCNTs(単層カーボンナノチューブ)、ナノスケールの酸化金属、ナノスケールのカドミウムについての現段階での毒性知識がまとめられている。Appendix Eでは、曝露登録(exposure registries)のメリットと課題がまとめられている。