Andrew Maynard氏のブログ追っかけ(まだ続く)

6月13日は合成生物学(Synthetic biology)とハッカー文化(hacker culture)の話

なぜハッカーかと言うと、合成生物学はいわば生物学版のハッカーだということ。そしてまさにハッカー文化が浸透しつつある。そうすると必然的に、社会的・倫理的問題が生じ、急速な技術進歩は法規制ギャップを拡大させる。U.K. Biotechnology and Biological Sciences Research Council(BBSRC)のBioscience for Society Strategy Panelからの委託で、報告書、'Synthetic Biology: social and ethical challenges'(pdf)が作成された。著者はUniversity of Nottingham, Institute for Science and SocietyのAndrew BalmerとPaul Martin氏。報告書自体も全36ページで手頃だけど、Richard Jones氏のブログSoft Machine記事が勧められている。Maynard氏が注目したキーワードは'garage biology'(ガレージ生物学)という言葉、つまり価格や技術が手頃になることで実現する可能性がある自宅で簡単にできる趣味としての生物学だ。

6月21日はサンスクリーンの思わぬ影響の話

オーストラリアでペイントされた屋根が部分的に急速に劣化する現象が見られているという。それも指や手、足の形で。容疑はサンスクリーンに向けられた。それも最近のサンスクリーン、つまりナノ粒子入りのものだ。ナノ粒子の安全性については真皮や血管まで入るかどうかという議論のほかに、最近もう1つの懸念が浮上した。ナノ粒子、太陽光、湿気が合わさることで、腐食性化学物質を生み出すのではないか、つまり光触媒作用を持つようになるのではないかということだ。もともと二酸化チタンや酸化亜鉛光触媒作用を持ち、水分のあるところではフリーラジカルを生成することは分かっており、1)アナターゼやルチルとのミックスでは光触媒活性が高いけど、ルチルのみでは低い、2)フリーラジカル生成を防ぐ材料をコーティングする、という対策がとられてきた。ところが最近出た論文は10種類の市販のサンスクリーン(4種類は非ナノ、6種類はナノ)で12週間の実験したところ、5種類のナノ粒子入りのサンスクリーンでペイントされた屋根の光沢が失われた。つまり1種類は悪影響がなかった。これだけはルチル型の二酸化チタンを使ったものだった。論文では特定していないけど、Oxonica社のOptisolかもしれない。Optisolではルチル型の二酸化チタンナノ粒子の結晶格の中に少量のマンガンを含んでいる。ちなみに、ホームページにはフリーラジカルを減らすためにマンガンを含んでいることがグラフとともに明記されている。でも多くの二酸化チタンのナノ粒子を使ったサンスクリーンは環境中へ放出されたあとも光触媒機能を持ち続けることになる(触媒だから破壊されない)。そうするとやはり、規制の問題に踏み込まざるをえなくなる。FDAは現在のところ、ルチル型とアナターゼ型を区別していない。ナノ規制の第一歩は意外とこんなところからかもしれない。