自主的取組に排出量取引を組み込むという方法

9月9日に「地球温暖化に関する関係閣僚会議」で温暖化ガスの国内排出量取引の実験を10月から始めることを確認したそうだ。これは欧州なんかの排出量取引とは似て非なるもので、今やっている自主行動計画の達成手段の1つに排出量取引が加わったというだけ。基本は自主的取組。自主行動計画は、業界団体ごと(さらに企業ごと)に削減目標を立てて努力するっていうやり方で、どちらかというと横並び重視で、経済効率性は無視されていた。排出枠の売買を認めることで効率性の要素を付加するという話でそれ自体は悪くないと思う。ただ、「排出枠の信頼性を確保するための認証制度を整備する」とあるように、下手すると、詐欺だとか、不正の温床にもなりかねない危うさも感じる。「減らした排出枠」を計算するには「もし対策をしなければ○○トン排出していたはず」という仮想のシナリオを作って、それとの差分を見積もる必要があるのだけど、仮想シナリオはけっこう恣意的に(つまり過大に)決めることができそうだ。認証機関が1つ1つ検証していくんだろうか?少々怪しくてもそれを過大だと第三者が証明することは難しいと思う。またそもそも排出削減が実際に実施されているか(偽装排出削減なんてことになってないか)きちんと追跡できるんだろうか?
記事では取引する排出枠として以下の4つが挙げられている。

  1. 国連が認めた海外で調達した排出枠
  2. 企業が自主設定した排出上限から自助努力で減らした排出枠
  3. 大企業が中小企業に資金・技術支援して減らした排出枠を自分の削減分とみなせる「国内CDM」の排出枠
  4. 環境省が実施する「自主参加型国内排出量取引制度」の排出枠

排出量取引環境省自主参加取引の実験を先に始めたのに、経産省主体のこちらの実験は、業界団体ごとにすでに取り組んでいる自主行動計画に排出量取引を組み込んじゃえというアイデア環境省の自主参加取引までも組み込まれてしまっている(主導権争いっぽい?)。
経産省の「国内クレジット(CDM)制度」について9月19日まで意見募集中だ。排出削減量は、ベースライン排出量から事業実施排出量とリーケージ排出量を引いて算出することになっている。リーケージはたぶんlinkageのことだろうけど、「設備の生産、運搬、設置、廃棄に伴う温室効果ガス排出量は、リーケージとしてカウントしない」というのが気になる。要するにLCA的な計算は行わないということだ。