"proactive"なリスク評価

チューリヒで7日から10日まで開催されているNanoTox 2008Second International Conference on Nanotoxicologyの最後のセッション(No.9)は、"Ecotoxicology & Proactive Risk Assessment"というタイトルが付いている。注目は、"Proactive Risk Assessment"だ。"proactive"は日本語にすると、積極的な/先を見越した/事前の策を講じた、というような意味だ。つまり、国際機関や公的機関がリスクについてあれこれ言うまえに、開発者や使用者が先に評価をやっちゃうということ。より正確に言うと、評価を「戦略的」に行うこと。リスク評価を先手を打って実施することで、事業者は様々な不確実性を減らすことができる。まずは、研究開発が無駄になるというリスクを減らすことができる。次に、どんな規制ができるかどうかわからないというものすごい不確実性も、先にリスク評価を実施することで、作業環境での基準値ができたとしてもこれくらいという目安は得られる。また、一般市民からのリアクションも大きな不確実性だけど、自ら積極的にリスク評価を実施し、情報を公開しているという姿勢は、人々の「不安」を大きく減らす。「リスク評価をする」ということ自体はここ数年でもうすでに当たり前の話になった。これからは"proactive"あるいは"strategic"なリスク評価を行うことが差を付けるための要件となる。そういう意味で、NanoTox 2008は先見の明がある。
ちなみにそのセッションでの発表は4件あり、そのうち以下の3件がこれに該当しているようだ。

  • ドイツのResearch Center KarlsruheのNau氏による「NanoCareプロジェクト:合成ナノ粒子の健康側面へのドイツのイニシアティブ」
  • 英国エジンバラのInstitute of Occupational MedicineのTran氏による「ナノ毒性学とリスク評価」
  • Rochester大学のOberdorster氏による「ナノ材料のハザードとリスクの予測可能性:方法と課題」

NanoCareプロジェクトはここ(pdf)に概要が載っている。8枚目にはリスク評価戦略が示されている。ホームページもあるがドイツ語だけかもしれない。