有害性発症メカニズムについての論文2本

多層CNTがマウスに全身免疫機能を低下させる仕組み

Nature Nanotechnology誌のオンライン版に載った論文。ガーディアン紙の記事の中で著者は、「肺の外でも影響が出てること」を強調している。以下、要旨の抄訳(正確でないかも)。

0、0.3、1mg/㎥の3群のマウスに多層CNTをチャンバー内で、6時間/日、14日連続、全身曝露させた結果、1mg/㎥群のみに免疫機能の抑制が見られた。肺のタンパク質からの信号を受けて脾臓内でシクロオキシゲナーゼ酵素の活性化が見られた。脾臓細胞にシクロオキシゲナーゼ酵素の形成を阻害するイブプロフェンを投与すると免疫機能が部分的に回復した。また、シクロオキシゲナーゼ酵素を持たないノックアウトマウスでは、免疫機能の抑制が見られなかった。これらのことから、この酵素が有害性発現に重要な役割を果たしている可能性が高い。

PAMAMナノ粒子の急性肺毒性を引き起こす仕組み

Journal of Molecular Cell Biology誌のオンライン版に載った論文。これもまた有害性発現メカニズムを明らかにしたとされている。内容は難しいんだけどこんな感じかな。

医療用途のために開発されたPAMAMデンドリマーナノ粒子(G3)を、培養したヒト肺A549細胞に曝露させたところ、細胞死が起きたが、アポトーシスではなかった。TEMで観察したところ、細胞中にオートファゴソームの集積が観察され、これはオートファジー(自食)が起こっていることの証拠と考えられた。そこで、自己貪食の阻害剤である3MA(3-methyladenine)で処理したところ、オートファゴソームが激減した。さらに、in vivoでも確認するために、PAMAMデンドリマー(G3)をマウスに気管内注入したところ、肺の炎症などが生じた。これらの症状は、3MAを投与することで改善された。これらのことから、PAMAMナノ粒子による急性の肺毒性にオートファジーが関与し、阻害剤が治療効果を持つ可能性があることが分かった。

BBCニュース記事中で、この論文に対してエジンバラ大学のDonaldson氏が「PAMAMは特殊な材料なのでここからナノ粒子全般についての結論を得ることは誤りだ、ナノ粒子というくくりでまるで1つのものであるかのような言い方はすべきでない」とコメントしている(かなり意訳)。