「ナノテク安全についてみんなが知っておくべき10のこと」
Andrew Maynard氏がヘルシンキで8月末に開催された第4回ナノテクノロジー国際会議−労働安全衛生(NanOEH2009)の終わりのスピーチで話した内容がブログにアップされたので適当にメモ。
10.「ナノテクノロジー安全」のようなものは存在しない。
「ナノテクノロジー」の定義は便宜上のもの。ナノテク製品も多様。安全性についてナノテクノロジー全体に共通するものがあるわけではないので、そういう総称はかえって誤解を招く。ナノテク自体は安全性について中立的であり、語るべきは「ナノテク安全」ではなく、ナノテクの応用による材料・製品・プロセスの安全な取り扱い・使用・処分だ。
9.私たちはポスト化学の世界に住んでいる。
これまではリスクを評価する際には化学的性質のみを考えていればよかった。ナノ材料は、化学的組成に加えて、物理的形態(サイズ、形状、構造など)も考慮しなければならない。とはいえ、これまでもアスベストやその他のファイバーの場合には、化学的性質と物理的形状の双方を扱ってきた。ただルールではなくあくまでも例外だった。
7.ナノマテリアルは形を変える名人である。
ナノマテリアルはライフサイクルにわたって、そのときどきの環境に応じて動きや特性が変化する。また、凝集したり分散したり。そうなると、労働環境で安全性が確保されても、ライフサイクルで確保されたことにはならない。その逆もありうる。
6.技術は新規だけど、古くからある安全策が不必要になるわけじゃない。
毒性が分かっていなくても、すでに確立された労働衛生管理策が大いに役立つ。ただしある程度までであることもお忘れなく。
5.曝露を減らせばリスクも減る。
用量反応曲線の形がどうかとかいう議論はもちろんあるけど、ガスでも液体でも粒子でも、曝露が減ればリスクは減る。でも、どこまで減らせばいいのかという根本的な疑問は残る。
4.その意味が不明な計測は、エンジンのないクルマのようなもの。
曝露計測のベンチマークがあればよい。たとえば曝露基準値とか。でもそういうのがない場合、自分でベンチーマク値を作る必要があり、その際、BSIの勧告も参考になる。
3.データがない場合…イノベーションを起こせ!
Murashoc and HowardがNature Nanotechnology誌に書いた論文がヒントになる。そこで彼らは、ソフトな(定性的な)アプローチを検討する必要性を強調。専門家の判断やコントロールバンディングの活用だ。
2.話すのは良いことだ。
グローバルなステイクホルダーの協力が必要だ。安全性は国際競争の対象にすべきでない。シェアすることが共通利益となる。そして現にそういう方向に進みつつある。その象徴は、Good Nano Guideだ。
1.人間が大事。
単純で当たり前のことだけど、リスク研究はヒトの安全や健康を守るのが第一。