IRGCと「ガバナンス」

IRGCは国際リスクガバナンス協議会.「ガバナンス」には適当な日本語がない.コーポレート・ガバナンスは企業統治と訳されることもあるが,統治には支配しているような印象がある.

IRGCは「ナノテクノロジー・リスク・ガバナンス」というプロジェクトを開始した.政府,企業,NGO,国際機関など,多数の主体がそれぞれの役割を持って新しい技術をコントロールしていくという観点から「リスク管理」でなく「リスク・ガバナンス」としている点は納得するのだが,ガバナンスの対象を「リスク」に限っている点がやや不満だ.ナノテクにはリスク以外にもたくさんの潜在的な目新しい属性があり,それらをすべて含むように「ナノテク・ガバナンス」(IRGCの報告書のタイトルはこれだ)あるいは「ナノテクの社会的ガバナンス」という言葉がいいかなと思っている.

これまでの経緯をまとめてみると,

  • 2005年5月 専門家によるワークショップを開催,白書「ナノテクノロジーとリスクガバナンスの必要性」発表
  • 2005年7月〜11月 各国のキーパーソンへのアンケート調査
  • 2006年1月 報告書「ナノテクノロジー・ガバナンスに関するアンケート調査:Volume A.政府の役割」を発表,専門家によるワークショップを開催
  • 2006年6月 最終的な会議を開催
  • 2006年秋  最終勧告をまとめる

彼らは国際的なガバナンスの枠組みを作ろうとしているのだが,やはりここでも米国流「リスク評価」vs.欧州流「予防原則」の対立が予測される.
日本は果たしてどんな立場をとるべきだろうか.