「リスクコミュニケーション」という言葉が定着してしまう前に!

化学物質や新技術を社会でうまく使っていくために「リスクコミュニケーション」が大事だと言われる.しかし,化学物質や新技術の「リスク」だけコミュニケートしても意味がないし,むしろ有害だ.化学物質の持つ有益な面や特徴など,新技術が何に使われて,どんな便利なことがあって,どのような問題点(リスクを含む)があるのか,といった全体をうまくコミュニケートしなければ全く意味がない.実際は「リスクコミュニケーション」と言いながら,きちんと「リスク&ベネフィットコミュニケーション」のような形をとっている例もあるだろう.しかし言葉は正確に使っていきたい.化学物質や新技術は「リスク事象」であって「リスク」ではない.「リスク」は化学物質や新技術が持つ属性のうちの1つにすぎない.コミュニケートすべきなのは,「科学(science)」や「技術(technology)」や「物質(substance)」の全体であるべきだ.