温暖化関連アップデート

まずは世界気象機関(WMO)による発表から.2005年のCO2濃度は379.1ppmで前年に比べて0.53%上昇して観測史上最高値を更新(記事).N2O濃度も319.2ppmで前年に比べて0.2%上昇.メタンなど他の温暖化ガス濃度は変化なし.
先日,「温暖化ガス・メタン、00年以降増えず 東北大など観測」という記事があった.メタン濃度は1730ppbで2000年レベルで安定しているそうだ.理由は分かっていないが,「湿地からの発生が減っている」とい説も有力で,だとしたら,開発などで湿地が減ったおかげという皮肉な結果になってしまう.温暖化問題では,人体に有害な煤が温暖化を抑制してるとか,そういうトレードオフ現象が多い.そもそもヒトが生きていること自体,温暖化に寄与しているという根本的な矛盾がある.長生きはCO2をたくさん出す.少子化はCO2排出量を減らすのだ.子供を増やすと必然的に将来のCO2排出量は増えるのだ.医療の問題や少子化の問題を考えるときにCO2排出量の変化まで考えるべきなのだろうか?たぶんNOだと思うが,原油価格高騰の問題を考えるときは,経済活動へのマイナスの影響だけでなく,CO2排出量の削減につながるかもというプラスの影響も考慮してもいいはずだ.その境目が難しい.
メタンの話に戻ると,「地球温暖化悪循環に 湖底のメタン大量放出」という恐ろしい記事もあった.これは,シベリア地方の湖の下に閉じ込められているメタンが,地球温暖化が進んだことで,気泡になって上昇し,大気中への放出が始まっているという話.だとしたら,メタン濃度が安定しているというのは一時的な現象で,これから再び,以前のスピードを超える上昇が始まるのかもしれない.
温暖化の話では,先日,元世界銀行主席経済学者のSir Nicholas Sternが「気候変動の経済学に関するレビュー」報告書を英国政府に提出した(報告書のサイト).これに対する専門家や団体からのコメントや関連資料が多数掲載されている.IPCCの2001年報告書をベースに計算した気候変動がもたらすコストはGDPの5%程度であったが,自然発生源やヒト健康への影響など新たな知見を組み込むとGDPの20%以上に相当すると推計した.また,CO2を1トン排出することの外部費用は少なくとも85ドルと計算されている.これよりも安い対策は山ほどある.低炭素経済(low-carbon economy )に移行するための技術のマーケットは2050年までに少なくとも5000億ドル(60兆円近く)の規模となる.要するに,著者の主張は,地球温暖化対策は成長促進対策であり,逆に何もしないと経済的に大きな損をするのだということ.これはアンチ温暖化対策の人たちの土俵の上に上がっても勝つぞという主張でなかなか効果的だ.ただ,割引率の選択など,経済分析の手法にはいろいろ批判がでているらしい(続く).