バイオエタノール・ブームをめぐるトレードオフの数々

気候変動対策としてのバイオエタノールの利用は,1つのリスクを下げようとすると,いろいろなところでトレードオフが出現し,リスク削減対策には冷静に全体を見渡す能力が必要であることがよく分かる事例だ.ほんとは,ダイオキシン対策だって,シックハウス対策だって,どんな対策にも多かれ少なかれこういったことはある.でも,影響が小さかったり,気付かれなかったりしてあまり注目を集めなかった.環境や安全の問題は,経済政策や教育政策なんかと違って,善悪で判断しやすいと思われがちだ.良いことをしたいとか世の中に役立ちたいと思ったらすぐに実行できそうに思える.自動車を利用せずに自転車に乗るなら,確かに環境にも健康にもお財布にも優しい.これはたしかに一石三鳥だ.でも,ガソリンの代わりにエタノールを利用するっていうのはどうだろうか?食糧供給や飼料供給との競合によって,トウモロコシや砂糖の値段がすでに上がっている.その結果は例えば,養豚農家が悲鳴を上げているという記事などに現れている.当然,トウモロコシやサトウキビの畑を拡大する過程で,森林の伐採が進む場合も出てくるだろう(すでにブラジルなどではあるかもしれない).ブームというのはいつの間にかそれが自己目的化してしまう.