ハザード評価とリスク評価,そして総合評価

先日,リスク評価には3種類あって(参照値を決めるためのリスク評価,スクリーニングのためのリスク評価,リスクトレードオフのためのリスク評価),結果をどう使うかによってリスク評価のやり方は変わるという話をした.これに対して昨日,参照値を決めるための評価はハザード評価であって,リスク評価と言わない方がいいのでは?との指摘を受けた.まったくそのとおり.特に,厚生労働省関係でよく参照値の導出を「リスク評価」だと言っている.食品安全委員会でやっていることもその多くはハザード評価(有害性評価)であってリスク評価でない.
さらに考えないといけないのは,リスク評価だけでは本来不十分だということ.意思決定のためには,ベネフィット評価もセットで行わないといけない.「健康リスク」や「生態系へのリスク」は化学物質が持つ属性のうちの1つにすぎない.全体を考慮しないと意思決定につながる評価にはならない.この「全属性評価」のことを何と呼ぼうか.この点は先日「リスクだけコミュニケーションしても意味がないし,有害な場合だってある」という形で報告した.化学物質のベネフィットは,「排出削減対策にかかる費用」で代用されることが多かったが,正面から評価できるような仕組みがそろそろ必要かもしれない.特に,新技術の社会受容性を考えるときには必須だ.