法規制ギャップ調査とは?

英語では"Regulatory Gap"と表現され,例えばナノテクノロジーの急速な発展に対して,現行の法規制システムが対処可能かどうかについて米国や英国で調査が行われている.しかし日本語では検索してもほとんど出てこない.ナノテクノロジーについて,米国の調査では,明確にギャップありと指摘するウッドロー・ウィルソン国際学術研究センターのProject on Emerging Nanotechnologiesによる報告書(Davies 2006,Talor 2006)や,環境法には大きなギャップはないとする全米法律家協会(ABA)の報告書などが出ている.また,化粧品でのナノ材料の使用のモラトリアムを求めるNGOの主張も,現状には大きな法規制ギャップがあるという指摘だととらえることができる.英国では,環境法については法規制ギャップが指摘されているが(Chaudhry et al. 2006),食品,労働,医薬品などについては否定的な報告がなされた.そこでいま日本について調査を行っている.
この「法規制ギャップ」という言葉をどのように説明するかいつも苦労していたのだけど,よく考えたら,世の中の事故や不祥事は「法規制ギャップ」によって生じているものが多いのだ.先日のジェットコースターの事故も,建築基準法の「工作物」として規制されていたという法規制ギャップが原因だ.すなわち,メリーゴーランド的時代から最近の特急列車並みの高速で走るジェットコースターへの進化へ法規制がまったくついていけてなかった.これを法規制ギャップという.
事件や事故が起きてから,法規制の改正が行われることが多い.もし事前に「法規制ギャップ」の調査が行われていたら,防げた可能性がある.そうなると,法規制ギャップ調査というのは,新規技術にだけやるってもんじゃなくて,あらゆる分野で数年に1回,法規制ギャップ調査を実施するということにしてもいいくらいだ.これは技術分野だけに限らない.高野連の特待生問題だってそうだ.50年以上前にできた憲章(法規制)が実態と合わなくなっていたのだ.立派な法規制ギャップ問題だ.