法規制ギャップ調査の意義

渋谷の温泉施設の爆発事故もその原因は「法規制ギャップ」にある.ボーリング技術が進み比較的簡単にどこでも温泉が作れてしまう状況に法規制が追いつけなかった.社会は常に動いている.イノベーションが進むと必ず,既存の法規制体系とのギャップが生じる.これに対して官僚や政治家の対応は必ず遅れる.そのうちに事故や事件が起こり,これをきっかけにして法規制が進む.このときマスメディアなどで集中的に報道されるため,今度は逆に振れて,(他とのバランスからみて)法規制が厳しくなりすぎてしまう.
つまり,現状のシステムは,事故が起こるのを待って法規制ギャップを埋めていくという仕組みだ.どう考えても頭が悪い方法だ.事故が起きるのをぼんやり待っているようなものだ.イノベーションの数だけ事故が起きなくてはいけないし,事故はその後のイノベーションを萎縮させてしまう.
あるべきシステムは,事故が起きる前に先手を打つやり方だ.このためには,あらゆる分野で定期的な法規制ギャップ調査を行うことが必要だ.
また,予測市場も役に立つかもしれない.事故などの不幸な出来事を予測するのは不謹慎だと考える人もいるかもしれないが,そこそこ知識がある人なら温泉施設で事故が起きることは予想できていたかもしれない.しかし,現状ではそうした知識を社会に生かす仕組みがない.予測市場があれば,例えば「温泉施設の事故が1年以内に起きる」の価格(予測確率)が低いと思ったらどんどん買えばいい.そうすると,価格が上がり,官僚や政治家へのシグナルになる.AEI-Brookings Joint Centerの人たちは,こういったやり方を「政策市場(policy markets)」と名付けて,予測市場を様々な分野の政策意思決定に使うことを提唱している.