高齢者の肺がん治療は非効率

American Cancer SocietyのジャーナルCancerに載った論文.「高齢者における肺がんへの医学的介入の価値:SEER-CMHSFからの結果(The value of medical interventions for lung cancer in the elderly: Results from SEER-CMHSF)」は,高齢者の肺がん治療は非常に非効率であると結論.こういう指摘は一見,冷酷に見えるけど,世の中のリスクを最小にするためには考慮せねばならぬこと.そういう意味ではマクロに見るととてもヒューマニズムなのだ.以下,詳細.
米国の高齢者における非小細胞肺癌について1983〜1997年の実績をもとに計算.SEERというのは,"Surveillance, Epidemiology, and End Results"の略で,癌の統計のこと.CMHSFというのは,"Continuous Medicare History Sample File"の略で,医療コストの統計.その結果,余命の延長はわずか平均0.6ヶ月なのに対して,費用は患者1人あたり20年間で2万ドルも増えていた.余命を1年獲得するための費用は約40万ドル(約5000万円)と計算された.転移性のがんでは約120万ドルにもなる.これらは通常使われる費用対効果の閾値よりもずっと高い(とはいえ,環境対策の余命1年獲得費用はだいたいこれくらいか,さらに高いんだけど).