大統領府OSTPとCEQが監視原則の覚書を通達

米国大統領府の科学技術政策局(Office of Science and Technology Policy: OSTP)と環境諮問委員会(Council on Environmental Quality: CEQ)が,省庁向けに覚書(memorandum)を,11月8日発表した(pdf).各省庁で規制導入の動きが出てくるのを牽制する意図があるのだろう.全体にナノテクのベネフィットを強調する傾向があり,安易な法規制の導入に釘を刺す内容になっている.最後には「規制のベネフィットがコストを正当化すべきである」という大統領令12866号の文面まで出てくる.全文の仮訳は以下のとおり.

ナノテクノロジーの環境,健康,安全監視の原則

目的連邦政府による監視アプローチは,進化しつつある科学と技術をとりまく不確実性を認めつつも,ナノテクノロジーの持つ,健康,経済,環境へのベネフィットを含む,潜在的なベネフィットを認識すべきである.ナノテクノロジーの文脈において,環境,健康,安全への監視アプローチを検討する目的は,ヒト健康および環境を保護することである.

現時点での理解連邦政府の現時点での理解は,既存の法的権限はナノテクノロジーとその応用分野の監視に取り組むためには十分であるというものである.発展しつつある分野によくあるように,新しい情報が入手可能になるのに応じて,ナノテクノロジー分野に取り組むために,連邦政府は,必要に応じて,追加的な監視アプローチを修正したり生み出したりするだろう.

情報生産ナノ材料のヒト健康や環境への影響に関して,十分な情報が生み出されなければならない.実行可能な範囲および秘匿情報(例えば企業秘密情報(CBI))に当たらない限りで,こうした情報は,連邦政府ナノ材料の開発者を含む利害関係者によってオープンで透明な方法で生み出されるべきである.
リスク評価とリスク管理連邦政府は,安全・健康・環境影響,および曝露低減を考慮しながら,リスクとベネフィットを評価し,リスクを管理するためには,標準的な監視アプローチを用いるべきである.経験が蓄えられれば,これらのアプローチは洗練されたものになるだろう.連邦政府は,政府内のリスク評価と管理アプローチにおいて,ある程度の整合性に達するよう努力すべきである.
国際的ナノテクノロジーの開発努力は世界規模で行われていることを認識し,連邦政府は,国際協力を積極的に推進すべきである.連邦政府は,国際的なコミュニティにおいて,調整され,連携した健康・環境研究と試験データの生産を奨励すべきである.連邦政府は,国際的なコミュニティが情報にアクセスできるようにすべきである.これらの努力によって,連邦政府は,国際的コミュニティにおいて,必要に応じて,リスク評価とリスク管理アプローチに貢献すると同時に,うまく活用すべきである.

規制の向かう道:これまでに書いた監視の「目的」に照らして,連邦政府は,ナノテクノロジーの環境・健康・安全規制を確立するにあたって,法律の許す限りにおいて,および,それが適切な場合には,以下の事項を考慮すべきである.

  • 規制は,必要性が存在し,かつ,科学的情報が対応を支持する場合に,取り上げられるべきである(例えば,すべてに当てはまるアプローチではなく,ナノ材料の特定のグループやクラスをターゲットとするような).
  • 決定は,最も合理的に入手可能な科学的,技術的,経済的,およびその他の情報に基づくべきである.
  • 可能な場合は,規制アプローチは,イノベーションを妨げるよりもむしろ,可能にするようなものであるべきである.
  • 規制アプローチは,実行可能な限り,成績ベースであり,科学と技術の急速な進化に対して予測可能性と柔軟性を備えているべきである.
  • 規制のベネフィットはそのコストを正当化すべきである.
  • 規制は,オープンで透明なやり方で制定されるべきである.
  • 規制とガイダンスは,以下に列挙するようなすでに確立された要求事項とガイダンスを考慮すべきである(Executive Order 12866 / Information Quality Act等 / National Technology Transfer and Advancement Act of 1995 / Office of Management and Budget (OMB) Circular A-119 / OMB Final Information Quality Bulletin for Peer Review / OMB Bulletin No. 07-02(M-07-07) / OMB/OSTP Memorandum: M-07-24, Updated Principles for Risk Analysis)