日本での動き

欧米の人と話しても何もないのでしゃべるネタがなかったが、これまで比較的穏やかだった日本でも2008年に入り俄かに動き出した。英国や米国でのこれまでの議論がますます参考になるだろう。まずは世間の「ナノテク認知」にマイナスに働きそうなネタを列挙。

東京都

カーボンナノチューブ等に関する安全対策について:国へ提案要求をしました - 東京都報道発表資料
2008年2月22日、東京都のプレスリリース。The Journal of Toxicological Sciencesの2008年2月号に掲載された論文が、高用量の多層カーボンナノチューブを腹腔内投与した遺伝子欠損マウスに中皮腫が見られたしたことを受けてのもの。とりあえず論文のアブストを和訳。

カーボン起源のナノ材料は、マイクロメーターサイズの様々な形状の粒子を形成する傾向がある。それらの中でも、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)は、長さが10〜20マイクロメートルでアスペクト比が3倍以上の繊維状あるいは棒状の粒子を形成する。アスベストやいくつかの人工的な繊維を含むこのサイズの繊維状粒子は発がん性を持つ、典型的には中皮腫を誘発することが報告されている。われわれは、アスベストに感受性の高いp53ヘテロ欠損マウスにNWCNTを腹腔内注入した結果、ポジティブコントロールであるクロシドライト(青石綿)と同様に、中皮腫を引き起こすことを報告する。われわれの結果は、炭素起源の繊維状あるいは棒状のマイクロクロメーター粒子がアスベストにつして仮定されている発がんメカニズムを共有している可能性を示唆している。ナノ材料の産業利用の健全な活動を維持するためには、生物学的/発がん性特性、特に長期にわたる生体内耐久性が完全に評価されるまでは、労働現場や将来の市場において、繊維状あるいは棒状の炭素材料への曝露をうまくコントロールするための戦略を実施することが賢明であるだろう。

また、詳細は書かれていないが、「東京都健康安全研究センターの基礎研究においても、国立医薬品食品衛生研究所の研究と同様な結果を得ています」とのこと。

厚生労働省

第1回ヒトに対する有害性が明らかでない化学物質に対する労働者ばく露の予防的対策に関する検討会及び第1回ナノマテリアルの安全対策に関する検討会の合同会合の開催について - 厚生労働省報道発表資料
3月3日(月)開催。先日発表されたガイドラインを受けての検討会。タイトル長いなあと思ったら、わざわざ「ヒトに対する有害性が明らかでない」という文言が入っている。慎重な様子が伝わってくる。