Denison氏が指摘するNNIの"ugly"なところ:推進と監視の一人二役の限界

先のNNIの戦略報告書のp.46には"Gaps identified in the research that supports regulatory decision making should not be addressed at the cost of broad-based fundamental research – to do so would ultimately undercut the U.S. nanotechnology initiative as a whole."という記述がある(「規制意思決定を支援する研究において見つかったギャップは、広い基盤を持つ基礎研究を犠牲にしてまで取り組むべきではない−そうすることは米国のナノテクイニシアティブ全体を弱めることになる」)。これはナノテクの開発を遅らせるようなことになるならばリスク問題は放置しておいてもよいと言っているように読める。そしてこの矛盾は、そもそもNNIが、ナノテクの推進と監視の二役を同時担っていることに起因しているというのがDenison氏の問題意識だ。この点は2007年10月31日の下院の科学技術委員会での公聴会証言でも指摘している(pdf)。米国では原子力行政は、1974年以来、規制役(原子力規制委員会)と推進役(エネルギー省)に分離されている(ウィキペディアの「アメリカ原子力委員会」参照)。Denison氏はこのモデルをナノテクにも適用せよと主張している。日本にも非常に参考になる議論だ。
ちなみに日本の原子力安全行政はもうちょっと複雑だ。安全規制は、推進側の経済産業省原子力安全・保安院などが行うと同時に、独立の「原子力安全委員会」がさらにそれをチェックする多層的体制になっている(ウィキペディア原子力安全委員会」)。