今度はNature Nanotechnology誌にMWCNTとアスベストの関連を示唆する論文

Nature Nanotechnology誌に,5月20日付でオンラインで発表された論文.Nature関連雑誌だけに反響も大きい.タイトルは"Carbon nanotubes introduced into the abdominal cavity of mice show asbestos-like pathogenicity in a pilot study"(パイロット研究においてマウスの腹腔に投与されたカーボンナノチューブアスベストに似た病原性を示す).Edinburgh大学のメンバーが中心で,連絡先はKen Donaldson氏になっている.他にも有名どころではVicki Stone氏や,さらにはAndrew Maynard氏も入っている!アブストだけさっと和訳.

カーボンナノチューブ(CNT)は独特の特性を持っているが,それらの針のような繊維の形はアスベストと比較されてきており,CNTが広範に利用されるようになると,中皮腫,すなわちアスベスト曝露によって引き起こされる肺の胸膜のがん,を引き起こすのではないかとの懸念を呼んでいる.本論文ではわれわれは,胸腔の代理として,マウスの体腔の中皮胸膜に,長い多層CNTを曝露させたところ,アスベスト様の,長さ依存の病原性の作用が見られた.これには炎症や肉芽腫として知られる病変の形成も含まれる.これは非常に重要である.というのは,研究およびビジネスコミュニティは,グラファイト黒鉛)よりも有害ではないという仮定のもとで広範囲の製品に対してCNTに大きな投資をし続けているからだ.われわれの結果は,もし長期にわたる有害性を避けようとするならば,そのような製品を市場に導入する前に,さらなる研究と大いなる警戒の必要性を示唆している.

ICONは対応が早く,すでにThe Journal of Toxicological Sciencesの2008年2月号の論文(過去記事)が出たときから専用ページ「多層カーボンナノチューブと中皮腫」を作って,すでに多くの関係者のコメントを掲載している.Donaldson氏のコメントも出ている.
さっそくニュースやブログにもとりあげられている.BBCは"'Asbestos warning' on nanotubes"(ナノチューブアスベストの警告)というタイトルで,ガスマスクをして危険物を運ぶ人の写真.日本でも,以前に発表されたと並べて報道されるだろう.Richard Jones氏のブログ記事やEnvironmental DefenceのBalbus氏の記事などもさっそく出ている.