REACHにおいてCarbonとGraphiteが対象物質に

6月9日(月)のEUの関係者の発言によると(nanowerk記事)、欧州委員会では前週、これまで免除規定であるAnnex4(物質固有の特性のためリスクは最小限であることが十分な情報により示されているもの)に含まれていた「炭素」と「グラファイト」を免除規定から外す、すなわちREACHのもとでの試験を必要とする物質とすることを決めたそうだ。現時点のAnnex4のリストにはまだCarbonもGraphiteも、H2OやCO2なんかといっしょに載っている。
ただし、閾値はまだ1トンのままだし、これですぐにナノスケールの炭素やグラファイトが特別に規制対象となったわけではない。あくまでもナノスケール物質を取り込む道を開いたにすぎない。

この決定ももちろんNature Nanotechnology誌のPoland et al.レターの波及効果の1つに数えることができる。でも、REACHの対象にナノ材料を含むようにすることは2004年の英国Royal Society and Royal Academy of Engineeringによる報告書の勧告の10番目(R10)にすでに指摘されていたことだ。

R10 我々はナノ粒子やナノチューブの形状をした化学物質が現行の(※英国の)NONS規制とREACH規制のもとで新規物質として扱われることを勧告する。ナノ粒子やナノチューブの毒性に関する情報が集まるにつれ、関連する規制主体が、試験を必要とする年間生産量の閾値やナノ形態の物質に関する試験方法がNONSやREACHのもとで改訂されるべきかどうか検討することを勧告する。

この勧告をベースに考えるならば、免除規定から外すというのはほんの第一歩だ。そう考えると、Poland et al.レターが後押ししたとはいえ、規定路線なのかもしれない。ただし、この件については欧州委員会からの正式なプレスリリースはまだない。
欧州委員会は、6月17日に「委員会はナノテクノロジーについての公開対話(public dialogue)を開始する − 安全な製品を通して経済的および環境保全上の潜在力を開拓する」というプレスリリースがあったが、内容は上記とは直接関係がない。むしろ、ナノテクはREACHを含む現行の法規制でカバーされている,と書かれている。また、現行の法規制を新しい製品に正しく適用していく、なんていう文言もあるので今後の展開の布石かもしれない。