EPAがVSLの公式値を下げたというAP記事

環境保護庁(EPA)が確率的生命価値(VSL)の公式値を下げたらしい。Associated Pressが記事を配信したおかげであちこちのニュースサイトに掲載されている。基本は、"An American Life Worth Less Today"(Timeなど)という見出しだけど、msnbcは独自に、"How to value life? EPA devalues its estimate: $900,000 taken off in what critics say is way to weaken pollution rules"(msnbc.com)という見出しをつけている。おまけに、The Colbert Reportにもとりあげられて、ネタにされている(リンク)。
5月時点での最新の値は690万ドルで、5年前の780万ドルから90万ドル下がったようだ。EPAは二段階で下げたらしい。まず2004年に8%カットし、さらに2008年5月、毎年やっているインフレ分の調整をやらないことで、合計11%カットしたとのこと。EPAのAl McGartland氏は消費者のWTPを反映してるだけだと主張、これに対してKip Viscusi氏はアメリカ人のWTPが低下したという事実はないと反論。同じ時期に、交通省(Department of Transportation)はVSLの公式値を2倍に引き上げたようだ(※ソース未確認)。でもまだEPAの値よりも小さい。
で、その2008年5月の「690万ドル」を探してみたんだけど、機関車とボートからの排ガス規制らしいのでたぶんこのルールだと思う。でも、このRIA(Regulatory Impact Analysis)に使われているVSLの値は660万ドルで、2020年の所得レベルの値である(Table 6.6-1など)。1990年の所得レベルでは550万ドルだ。また時間あるときに調べてみよう。
しかしVSL先進国の米国でも"When drawing up regulations, government agencies put a value on human life ..."なんて書いちゃうのか。"human life"に"value"を付けているのではないことは、先日パブコメにも書いた(リンク)。でも、ちゃんとWTPの説明もあるし、EPAの担当者の言葉ではあるけど、"According to the EPA, people shouldn't think of the number as a price tag on a life."なんてことも書いてはある。