Andrew Maynard氏のブログ追っかけ(リアルタイムに復帰)

7月17日のテーマは"Wysinwyg"、つまり"What You See Is Not What You Get"(あなたが見ているものはあなたが得るものではない)。ナノ文脈で言うと、がんばって計測してモニターしてキャラクタライズしても、その後、曝露したり、健康影響を引き起こしたりするときには形状や性質が変わってしまっていること。だから、実験前だけでなく、曝露後のキャラクタライズも必要になる(Oberdorster et al. 2005参照)。凝集(agglomerationやaggregation)についてはすでに言われているが、特にやっかいなのは"de-agglemeration"(凝集が分解すること)だ。例えば、吸入するときには直径が数μmあって100nm以下をモニターする検知器をすり抜けたナノ粒子のクラスターが肺の上皮に沈着したとたんに個々のナノ粒子に分解したとしたら?まさにWysiwygだ!
Maynard氏は2002年の論文(Maynard 2002)で、ナノスケールの二酸化チタンが人工的な肺サーファクタントによって部分的に分解したことを示した。ただし、個々の粒子(20nm)までは分解してなくて、このクラスターを一次凝集体(primary agglomerates)と呼んだ。で、最近出たOberdorster氏も共著者であるJing et al. (in press)論文では様々な液体環境での変化を検証している。Maynard氏が注目するのは"de-agglomeration"の節。Degussa P25二酸化チタンと実験室で合成したアナターゼ二酸化チタンを、ピロリン酸ナトリウム溶液中で超音波プローブでかき混ぜると粒子サイズがどんどん小さくなったとのこと。実験室で合成した方は一次粒子サイズまで、他方、Degussa社の方は流体力学直径で155nmまで、すなわちMaynard (2002)の一次凝集体に近いものまで分解された。