CNTのTSCAインベントリステータスについての官報通知

10月31日、EPAは官報通知(Federal Register Notice)を発表した。

  • Toxic Substances Control Act Inventory Status of Carbon Nanotubes (pdf)。

カーボンナノチューブ(CNT)は、グラファイトをはじめとする炭素の既存の同素体とは異なる化学物質であり、TSCAのSec.5における新規化学物質に該当し、TSCAインベントリに掲載されていないCNTを製造・輸入する者は製造前届出(PMN)を提出しなければならないことを明言した。製造業者はEPAに、当該CNTがTSCAインベントリに掲載されているかどうかを確認するため、製造輸入を行う真正の意図(bona fide intent)を提出できる。
EPAはすでに「ナノスケール材料のTSCAインベントリステータス−一般的アプローチ」(和訳pdf)という文章において、ナノ材料一般についてのTSCAでの取扱いを説明していたので、CNTの扱いについても類推できたのだけど、この官報通知により、それがさらに明確になったということだ。また、これまでThomas Swan & Co. Ltd.をはじめ、いくつかの個別企業が、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)について、新規物質として、PMNを提出し、それに対してEPAが同意指令(Consent Order)を出していたことが明らかになっている。通知の中にも「EPAはこれまで、CNTについて、新規化学物質としていくつかのPMNを受け取り、審査しているところである」という記述がある。今回の通知は、EPAが、カーボンナノチューブに絞ってTSCAインベントリ上での扱いを明言したという位置づけだ。新たな情報としては、2009年3月1日以降に、EPAは、CNTを製造・輸入している企業がTSCA Sec.5の要求を遵守しているかどうかのモニタリングを実施することを予定していることが書かれている。
以上のことから、TSCAにおいて、CNTは「MWCNT」だとか「SWCNT」として登録されるのではなく、「A社のMWCNT」「B社のSWCNT」というような形でインベントリに載るということが分かる。ただ、疑問は残る。

  • A社でも製法や用途によって、CNTの形状や凝集状態が異なっていたりするわけで、いったいどこまで「同一物質」と評価されるのだろうか?あるいは、何を持って「同一」と判断するのか?
  • Swan社の同意指令の中でEPAは、NMSPの詳細プログラムへの参加を通して、他のMWCNT製造企業と共同で有害性試験を実施することを勧めており、それが実現すれば、この同意指令での試験要求(項目2=ラットでの90日間の吸入試験)は撤回すると言っている(リンク)。これは個別のCNTを審査することと矛盾しないのか?