今度はTSCAのSec.8を使った有害性情報収集の話

今度はTSCAのSec.8("Reporting and retention of information")だ。TSCAには様々な条項があって解釈や利用をめぐっていろいろな議論が可能だ。それに比べて日本の(現行の)化審法は単純明快だ。単純過ぎて面白みに欠けるとも言える。
TSCAのSec.8の(e)は"Notice to Administrator of substantial risks"と言って、製造・輸入・加工・販売を行う者に対して、彼らが取り扱う化学物質に関する、ヒト健康や環境への重大なリスク(substantial risk)を示す可能性のある、新規の未公表情報を得てから30日以内にEPAに知らせることを要求している。重大なリスク(substantial risk)の定義はここにあり、ハザードか曝露が大きいために、リスクの懸念が大きいことを指す。ただし、TSCA Sec.6の「不合理なリスク(unreasonable risk)」と違って、使用の便益や対策費用を考慮してはいけない。この条項のもとに提出された情報は、"8(e) Notices and FYI Submissions"で全部公開されている(もちろん秘匿されている情報も多いけど)。
ただしこのページには検索機能がないため、2000年から2008年9月までで2000件近くあるという提出情報のうち、ナノ材料に関する情報がどれくらいあるのか知るのは難しい。だけど、Environmental Defense FundのRichard Denison氏がやってくれた!(Blog記事へのリンク)。その結果、ナノ材料であると確認できた情報は8件見つかった。そのうち企業名が明らかになっているのは次の4社。

  • 3M Company
  • BASF
  • DuPont
  • Arkema

カーボンナノチューブ関係では3社。Arkemaは多層カーボンナノチューブ(MWCNT)についての雄ラットへの5日間吸入毒性試験(28日間観察)、BASFは「カーボンナノチューブ」(詳細はCBIのため不明)についてラットへの亜慢性(90日間)吸入毒性試験、そしてDuPontは単層カーボンナノチューブについて1回投与で3か月の観察期間を設けた気管内注入試験の結果を提出している。DuPontが提出した時期は早く2003年4月である(その結果はWarheit氏の2004年の論文になっているようだ)。試験結果については続く…。