Nature Nanotechnology誌にリスク認知に関する3本の論文

Nature Nanotechnology誌にリスク認知に関する論文が3本出た(いずれも電子版)。1本目はScheufele氏(University of Wisconsin―Madison)らによる「欧州と米国におけるの宗教的信条と一般人のナノテクノロジーへの態度」で、ナノテクへの道徳的な受容と宗教性が逆相関しているという内容。本人のブログ記事でも紹介されている。2本目はKahan氏(Yale Law School)らによる「ナノテクノロジーのリスクとベネフィットに関する文化的認知」で、ナノテクのリスクとベネフィットについて同じ情報を与えられても、もともと持っている文化的価値観の違いによって全く真逆の解釈がなされることを明らかにしたもの。両者とも、価値観というあらかじめ持っている変数が、認知や受容に大きな影響を与えることを明らかにしたもの。つまり、ナノテクの受容のためには、どんどん情報提供すればよいってもんじゃないということを示している。アンケートでどんな情報を与えたかだとか、詳しい内容は論文を見てから再検討することにしよう。Scheufele氏らは、宗教性の重要性についてはすでに別の論文に、ナノテクの文脈でもES細胞の文脈でも書いている。
3つ目の論文は、Pidgeon氏(Cardiff University)らによる「米国と英国においてエネルギーと健康への適用に関するナノテクノロジーのリスクについて討議する」で、米国と英国で開催した4回続きの半日ワークショップの結果を比較したもの。参加者はリスクよりもベネフィットに焦点を当てた、とのこと。

  • Scheufele, D. A., Corley, E. A., Shih, T.-J., Dalrymple, K. E. and Ho, S. S. (in press). Religious beliefs and public attitudes toward nanotechnology in Europe and the United States. Nature Nanotechnology.
  • Kahan, D. M., Braman, D. Slovic, P., Gastil, J. and Cohen, G. (in press). Cultural cognition of the risks and benefits of nanotechnology. Nature Nanotechnology.
  • Pidgeon, N., Harthorn, B. H., Bryant, K. and Rogers-Hayden, T. (in press). Deliberating the risks of nanotechnologies for energy and health applications in the United States and United Kingdom. Nature Nanotechnology.