ドイツでスタートしたInno.CNT(イノセント)
Inno.CNT(「イノセント」と発音する。もうちろん"innocent"と掛けている)というプロジェクトの発足イベントが1月26日にレバークーゼンで開催された(nanowerk記事)。正式名称は"Innovationsallianz Carbon Nanotubes"(Innovation Alliance Carbon nanotubes)。CNTのイノベーションに特化した国家プロジェクトだ。8000万ユーロ(約100億円)の資金の半分は連邦の教育研究省(Federal Ministry of Education and Research(BMBF))の"Materials innovation for industry and society"プログラムから拠出され、残り半分は参加するおよそ80団体が負担する。参加団体リストを見ると、BASF,Bayer, Evonik Degussaといった材料を生産しているところだけでなく、利用側や研究機関も多数含まれている。
現在18のプロジェクトが決まっている。"Carbo"が頭に付き、そのあとに内容が来る。これらは5分野に分かれている。
Energy and environment
- CarboPlate
- CarboFuel
- CarboPower
- CarboMembran
- CarboInk
Mobility
- CarboAir
- CarboCar
- CarboSpace
- CarboRoad
Lightweight
- CarboTube:
- CarboElast
- CarboBau
- CarboMetal
- CarboProtekt
Crosscutting technologies
- CarboScale
- CarboFunk
- CarboDis
Safety
- CarboSafe
イノベーションのためのプロジェクトにきちんと"Safety"が入っていることが特徴(当然といえば当然だけどこれまであまりそういうのはなかった)。CarboSafeの予算は200万ユーロ(4年間)で、Bayer Technology Services GmbHが仕切るようだ。CarboSafeの中身は次のようなもの。
- CNTsの粒子サイズ、凝集状態、構成要素、濃度と粒径の分布(数、表面積、重量)の妥当性が検証されたオンライン計測方法と環境中での計測方法を開発
- 労働者(製造、設備メンテ、取扱い)のCNT曝露量を計測するための固定式および個人携帯用の計測技術と他のナノ材料への応用可能性
- CNTを用いた製品の加工(例えば、破砕したり、穴を開けたり、切断したり、あるいはリサイクル工程)からの環境放出量の予測手法を開発
- 様々な環境メディア中でのCNTの環境中動態のキャラクタリゼーションと生態毒性ポテンシャル
また、Inno.CNTのページにあるQ&Aにはリスクに関する質問が18個中5個を占める。
- 14. If the comparison of CNT with asbestos preserved?
- 15. What contribution Inno.CNT on the issue of security?
- 16. What risks are there for employees in the production of CNT?
- 17. How are CNT dismantled or disposed of?
- 18. Can I as a consumer tell if a product contains CNT?
この発足イベントが行われたレバークーゼンのChemparkという場所はまさに、Bayerが世界最大規模(年間200トン生産)のカーボンナノチューブ工場を建設した場所だ(プレスリリース)。発足記念式典の前に、新工場建設の記者会見が行われた。Inno.CNTはBayer社が主導しているようだ。