Andrew Maynard氏のブログ追っかけ

1月13日は"public engagement"(いまだに何と訳したらいいのか分からない)の話。

オバマ政権が"public engagement"を重視していることから、ナノテクの話へ。そもそも2003年に成立した「21世紀ナノテクノロジー研究開発法」にも"public input and outreach"ということが書かれていて、それに基づいて、アリゾナ州立大学とカリフォルニア大学サンタバーバラ校に"Center for Nanotechnology and Society"ができた。でも、いまのところ真の"public engagement"っていうのはあんまり例がないようだとMaynard氏は言う。そこで、参考になるのがRichard Jones氏がブログに書いた英国での経験だ。無知な市民に対して専門家が教育するというアプローチから、そもそもどのような研究を優先すべきかといった「上流」への市民の参加という流れが分かりやすく概観されている。Jones氏の言い方では「学者によって設定されるのではなく、社会経済的文脈によって設定されるアジェンダに従った、目的志向の、本質的に学際的な科学」であり、これは「モード2の知識生産」と呼ばれる(この本が引用されている)。

1月20日は、科学技術にとっての記念すべき日の話。

科学技術の復権を掲げるオバマ政権発足イベントを前にちょっと興奮気味なMaynard氏。混雑するワシントンDCに出るのではなく、ウェブで様子を見るようだ(twitterしながら)。カーボンナノチューブで作った"Nanobama"の写真入り。

1月23日は、アスベストとナノ材料の比較の歴史(1992〜2008)の話。

Defraが委託し、IOM(Institute for Occupational Medicine)が作成した"HARN"に関する報告書を受けて、CNTとアスベストの関連への言及の歴史を紐解く。ちなみに、HARNとは、"high aspect ratio nanoparticles"(高アスペクト比ナノ粒子)のこと。一番古いものは、Nature誌に載ったPaul Calvert氏の論文へのレターとして書かれた、Gerald Coles氏の1992年の文章"Occupational risks"だそうだ。1998年にはScience誌のレポーターであるBob Service氏が書いた"Nanotubes: The Next Asbestos?"というそのものずばりのニュース記事がある。ところが、これらに対する反応はほとんどなかった(詳しいレビューはLam et al. 2006を参照)。そして、2006年、Maynard氏らはNature誌に"Safe Handling of Nanotechnology"というCommentaryを書き、高アスペクト比で生体内残留性がある繊維状の工業ナノスケール粒子についての潜在的健康影響を5年以内に体系的に調査すべきであると提言した。そうして出てきた研究の1つが有名なPoland et al.(2008) Letterだ。要するに、アスベストとある種のカーボンナノチューブの類似性についてはずいぶん前から指摘されてきたにもかかわらず研究は進んでいない。で、やっとHARNレポートに戻る。次のエントリへ。